木島平2DAYS 2018 DAY1 中村龍太郎

信州大学時代から木祖村で開催されていた2DAYSに毎年参加していたのだが、昨年土砂崩れによって木島平に変わったことで、コースが危険という噂があって一年様子を見たのが昨年。
思っていた以上に面白いレースになっているようなのでエントリーしてみた。

イナーメからは3チームの出場。監督の意向でJPT選手をそれぞれに分けて、若い子たちと一緒に走る機会を設けたいとのことで、僕のチームは以下の五人。
信大の後輩で地元選手の北澤竜太郎、MTBを主戦場とする19歳小林勇輝、勇輝と同世代の渡辺鈴、そして今年からイナーメに加入したE3選手の松尾遊さん。

とりあえず個人TTの結果を受けて作戦を練ろうと打ち合わせて、TTの試走へ行く。
一周3.4kmのコースは冬季クロスカントリースキーのコースとして使用されているため、道幅が狭くところどころバンクになっている。
金曜日の夜からもはや恒例の腸腰筋の痛みが発症し、試走の途中で完全に痛みで足を回せなくなる。
宇都宮での落車の影響で平日は一度も乗らず、ただずっと仕事で座席に座っていたからそれが原因。もういい加減学習しろボク。
たった二周のみで戻ってきてTTバイクにディスクをつけてストレッチをする。
一度伸ばすとちょっと回復するがローラーに跨ってしばらく回していると痛くなってくる。
寒さも相まってアップをしたいのだが痛すぎてできず。結局一度も心拍を上げることができないままスタート地点へ。
マサルや小山に『コースを間違えないようにゆっくり行きましょう』と茶化され『スタート前だから集中させて!』と言うが、内心は足が痛すぎて余裕が無い。
この症状はアドレナリンが出るせいかレース中にいつの間にか無くなっていることが多いので、今回も走りに集中してればTT終わるころには治っていると思っていた。
しかしコーナーの多いテクニカルなレイアウトで雑念しか入ってこない

photo by youkanさん

右足が上がるたびに痛いので重いギアを踏んで回転数を落とす走り方になり、当然タイムはグダグダ。
ゴールして実況の「中村選手だけ向かい風が強かったんですかね」という言葉に『ーーー自主規制ーーー』して車に戻る

photo by 蕪木雅士

痛すぎて自暴自棄、嫁にほぐしてもらったりストレッチしたりで試行錯誤し、痛みは若干和らいだ。
しかし自転車に跨ると痛くなっていくのだろうという恐怖心しかない。

木島平のステージは全3ステージあり、1aが6.8kmの個人TT、1bが同じコースを24周する81.6kmのロードレース、二日目の2aが38周する129.2kmのロードレース、となっている。
1aで優勝したのは京都産業大学の松下選手。昨年のインカレの個人追い抜きのチャンピオンである。順当。
トップから16秒差の7位で1bステージに並ぶ。チームは総合を諦めていた僕は「自由にどうぞ」と放任。
足が痛くなったらすぐに降りて温泉に行こうと本気で思っていた。
ローリングスタートでバイクの後ろに着く、徐々に痛んでくる筋肉。「やっぱりやめようか…」と思った矢先、リアルスタートでWednesday racingの小山(いつもはチームメイト)がアタックするのに反応する。
何回も打ち込む小山に反応していたら、足の痛みがお尻に来て漕げなくなるほどの痛みではなくなった。
右足を上げた時にお尻が突っ張る感じがあったが、問題なさそう。レース続行を決断。
2周目に入ってグランドから登り基調のコーナーでイエロージャージの松下選手が後輪を滑らせ先頭で落車。
ナルシマの櫻井さんがそこにダイブするのを目の前で見たが自分は対向車線に避難できた。
一周の距離としてはクリテリウムに分類されるわけだが、木島平はパンク等でのニュートラルを認めていない。
総合1位が落車した集団はペースを落とすことなく突き進む。
たまらず京産のアシスト選手が先頭にいた僕に「イエローが落車しているので待ってもらえませんか!?」と聞いてくるが、落車の原因が不遇というよりは彼自身に原因があったので首を縦には振れず。
コース全体が開けていて折り返しが多いので後続の様子が良くわかるのだが、一人で走っている松下選手にはちょっと同情した。
12周回完了時のスプリント賞を小山が獲ってレースは半分を過ぎる。

photo by ふぉとふぉと館武居さん

13周目の登りで後ろからマサルがアタック。このアタックは今までと違って本気度を感じたし、ちょうど反応しやすい後ろについていた(マークしていた)ので同調する。
ついてきたのはInnocentの3人とMKWの選手。すぐにInnocentが坂大さんだけになり4人に。
後続の集団から逃げるべく本気の牽引。しかし四人は非常にキツイ。後ろを振り返るとFIETSの野口のユーマと、普段はグリフィンで走っているが今回はクオーレの村田のユーヤが二人で追ってきている。
二人とも強いのですぐに合流させて6人でローテ開始。
Innocentの坂大さんとMKWの選手のみ未知数だったが、立派な体躯から滲み出る平坦力と悪名高きMKWに弱者など居らぬと聞いていたので、「この逃げは面子的に確実に逃げ切る」と思った。
イエローが落ちたのもあって総合も考え出したが、とりあえずこのステージを獲ることがボーナスタイムも相まって総合順位を上げる近道だということは分かりきっていること。
折り返しでユキが二人で追ってきていたが、二人対足の揃った六人は分が悪い。

photo by ふぉとふぉと館武居さん

ボーナスタイム(上から3,2,1秒)がもらえる21周回完了時まではアタックもなくローテを回す。
21周回完了時の前の周回で笛が鳴るか不安だったので、20周回完了時にも一応もがいてみる。
マサルが同調してきてスプリント。マサルの加速がえげつなくてスプリントの自信を無くす。ただ、笛が鳴っているのをスプリント中に聞いていたので足へのダメージは最小限で済んだ。
次の周回は正式なボーナスタイム周回なのでもう一度マサルに挑むも、同じ形で刺される。
残り周回は3。スプリントになればマサルには勝てないので最終周の登りでアタックしようと決意。
ボーナスタイムの争い等から先頭はユーマとマサルと坂大さんの四人になっていた。それぞれの表情を見ると皆一様に疲弊している。
後ろとの差は変わらず40秒ほどなので逃げ切りはできそう。問題はどこから牽制に入るかだけど、最終周に入ってもローテが乱れることは無かった。
勝負の登り手前にさしかかり、坂大さんを先頭に下って登り返す。自分は坂大さんの後ろに入っていたので、登りでペースが落ちた瞬間に行こうと身構える。
すると坂大さんが同じ考えだったようで登りでペースアップ。完全に自分のタイミングを逃し、二番手で登り切ってしまった。
一応そこからの緩斜面でそのまま発射するが、後ろを振り返るとギャップが開いていない。

photo by ふぉとふぉと館武居さん

逃げ切れるとは思えないのでスプリントの展開に移行。ユーマとマサルと牽制していたら坂大さんが追いついてきた。これで四人。
途中二回のスプリントで自分の後ろにマサルがついて、そこから余裕で捲られていたので、今回もマサルは自分の後ろを離れないだろう。
ユーマの後ろで走りながらどこでスプリントかけるか考える。
コースのレイアウトは残り200mから細いS字になっており、途中二回のスプリント時はそのS字に先頭で入れば勝てると考えて頑張ったものの、撃沈。
ならば今度はそれを変えて、ユーマを先頭にS字に入り最後のコーナーでイン側を抜いてスプリント開始すれば、
マサルがアウト側に行った場合→ユーマが邪魔で長い距離を走らすことができる
マサルが一緒にイン側に来た場合→ユーマを追い抜くまで踏み込むタイミングを遅らせられる
と考えた。
感覚でスプリントするのではなく、ちゃんと考えてタイミングを待ってスプリントを開始するのは初めての経験。緊張でハンドルを握り直す。
ユーマがS字の最後のコーナーで一車身分アウト側にずれたのを見て踏み込む(ここでイン側を閉められていたら終わってた)。

photo by ふぉとふぉと館武居さん

ギアは既にアウタートップに近いところにあって、あとはゴールまで出し切るだけ。
目の端でユーマの向こう側にマサルの姿が見え、残り50mくらいで並ばれる。

photo by youkanさん

途中の二回に比べて遥かに自分が踏めていて、横一線でゴールラインへ。最後はハンドルを投げる。
並んだままのゴールだったので勝敗が分からなかったが、ビデオ判定する必要はない差だったみたい。

photo by 福田賢一郎

ガッツポーズはできなかったけど自分の中では会心のスプリントでかなり嬉しかった。
途中のボーナス2秒とゴールの6秒を加算して総合2位に浮上。4秒差のトップはユーマ。次の日のスプリントで勝てれば10秒が加算されるので逆転は可能。
ただ、自分と1秒差の3位にマサルがつけるので寧ろそっちの方が脅威。

photo by 福田賢一郎

後ろの集団には26秒差をつけたので、「総合は3人に絞られた」と思っていた(フラグ)。
続く

 

中村 龍太郎(なかむら りゅうたろう)

チーム:イナーメ信濃山形

2015年全日本選手権個人タイムトライアルチャンピオン。一般企業に勤めるフルタイムワーカーでありながら、Jプロツアーを走り1桁台の順位を量産。トラックレースにも参戦し、全日本オムニアムでは3位。毎週末のようにレースに参戦し、レース数はプロをも上回る。

主な成績

・2015年 全日本選手権 男子個人タイムトライアル優勝
・2015年 Mt.富士ヒルクライム優勝
・2016年 全日本選手権オムニアム3位
・2017年 JBCF Jプロツアー 前橋クリテリウム2位

使用機材

ロードバイク:Felt AR FRD

TTバイク:Felt DA1

トラックバイク:Felt Tk FRD

ヘルメット:BBB ティトノス

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