GTの27.5+のブースト規格MTB「PANTERA」を実際にトレイルで走ってインプレッション。
Bike : GT パンテラ エリート 2017 XS
カラー: ディープネイビー
ライダー:Kenji Jinno (裏山ライドTokyo)
GTのパンテラエリートは最新の27.5プラス規格、注目のモデルだ。
ヘッドチューブ付近、溶接面が広くとられてしっかりした印象。
サイズが小さくても不恰好にならず、むしろシャープで美しさすら感じる。
テスト用に試乗したのはあえてXSサイズ。
ホイール直径が大きくてもスタンドオーバーハイトは低く、小柄な人が安全に乗り降りできるのはもちろん、体をバイクの上で大きく動かせる空間がある。
1×11(30T×11-42T)のドライブトレイン。
シフト操作がシンプルなので、初心者でもチェーントラブルを恐れずに操作できる。
フロントが30Tと小さめなので、タイヤ直径が大きい27.5プラスのバイクだが必要十分な歯数の構成で、かなりの登りでも不都合を感じることはなかった。
Schwalbe Rocket Ron Performance 27.5×2.8″のタイヤを前後に採用している。
27.5「プラス」はこのタイヤの太さによるのだが、サイドもしなやかで、細かい凹凸を吸収しながらしっかりグリップする。
タイヤが太い=転がりが重い、という先入観はいい意味で裏切られ、比較的細かいノブが配置されており、転がりも太さの割に軽快に感じた。
カタログの説明にあるようにXSサイズとSサイズは「トリプルトライアングルではない」とのことなのだが、シートステイはトリプルトライアングルのデザインそのままにトップチューブ側面に溶接されていて、しっかりGTらしさを演出できている。
古くからのGTファン(小柄な人)も、Sサイズ・XSサイズを躊躇なく選べる。
シートやシートクランプ部にもフレームカラーに合わせてブルーがあしらわれていて、細かいところまで気が利いている。
また、120mmトラベルのRockShox FS-Reconは、右肩でコンプレッションが段階的に調整できる。
Schwalbe Rocket Ron Performance
27.5×2.8″タイヤのパターン。細かいノブが全面に配置されていて、タイヤ全体がしなやかに路面をつかみ、グリップする。
こういったガレ気味のトレイルでも、タイヤが岩の角を包み込むようにやさしく丸く転がる印象。石でタイヤがはじかれるような感覚は少なく安心感があり、ラインどりに集中できるので初心者でも必要以上に怖さを感じることなく楽しめるだろう。
タイヤが太いと重く見えるが実際には車重は軽く扱える範囲に収まっており、トレイルの登りなどで担ぐシチュエーションでもそう問題なく担いで歩けると感じた。
石が深く積み重なったような河原でも走行してみたが、接地面の大きさが効いて沈み込みにくく、かなり走れる。力任せに踏むのではなく、ジワリと回せる技術のあるライダーであれば、深い砂利や大きめの石の転がる瓦のようなシチュエーションでも乗ったままクリアでき、難しいシチュエーションでの乗車率もかなり上がるだろう。
岩場でもエアボリュームのあるタイヤが角を包むようにしなやかに転がり、基本的な体重移動をしてやれば怖さを感じることなくクリアできてしまう。これが例えば少し以前の2.1程度の太さの26inchホイールMTBだとライダーに求められる技量はもっと高いものになると思うのだが、27.5プラスだとあっけないほど楽に転がっていく。
多様な路面に「バイクの側で」対応してくれる、人間に優しいバイクだ。
ただし、かつてはこういった路面でシビアに求められた踏み込みのトルクコントロールや膝の使い方などの技術を駆使しなくても、かなり適当にペダリングしてもある程度「勝手に」走れてしまうので、「上手になる」ための練習はやりにくいのかもしれない・・・それが弱点といえば弱点だが、ほとんどの人は機材に制限をかけてまで上達しようとするわけではないので、問題ではないだろう。
むしろ、シビアなボディコントロール無しでもかなり「走れてしまう」この最新の一台は凄い、ということだ。
ならば、ということでさらに厳しい岩場に挑んでみたが、重心をしっかりキープしてやれば、ほとんど何もしなくてもコロコロと岩場の凸凹の頂点を丸く包みながら転がってしまう。
楽だ。楽すぎる。
砂地はどうだろうか。
予想通り・・・接地面が広いので沈み込みも少なく、この程度の路面ならストレスなく走れてしまう。
ファットバイクほどではないにせよ、面で路面を掴む感じが気持ち良い。
27.5プラス規格、いろいろと理にかなっていて、あらゆる面でライダーを楽にしてくれる。
トレイルを走っていると所々に張り出した根っこや露出した岩場が現れることがある。
パンテラのタイヤは、こういう場面での安心感が素晴らしい。
締まった路面でも気持ちよく転がる一方、こうした急な路面の変化(厳しい凹凸)にも懐が深く、破綻せずタイヤ全体で路面を掴んでくれる。
タイヤ自体の高さもあり、またエアボリュームも大きいため乗り心地はソフト。
リム打ちのリスクも低減しているはずで、とにかく余裕を感じる。
トレイルに石が浮いていても、根っこが張っていても、身体をリラックスさせたままで重心の位置をコントロールしながらラインを選んで進入すればほとんどの場合問題なくバイクはスルスルと進んでいく。トレイルの難易度をバイクの側で下げてくれるようだ。
低速でも細かいギャップの角を丸く取ってくれる上にグリップも良く、前へ前へと転がってくれる27.5プラスの規格のパンテラは、初心者にも扱いやすく、中級者にはラインどりや基本的な体重移動に集中して走りを楽しむ余裕を与えてくれる。トレイル上級者にとっては、厳しいルートでの乗車率を上げてくれる強力な武器にもなるだろう。
一言で言えば、トレイルを余裕をもって楽しむためのハードテールの「現在」を凝縮したような一台。
27.5プラスのホイールに合わせて最適化されたフレーム、シンプルに操作できる1×11のドライブトレイン、従来よりも幅広のブーストエンドなどの新規格を盛り込みながらバランスよくまとめられたこのパンテラ。この一台がライダーに与える余裕は素晴らしいものがあると感じた。
その「余裕」を、より楽して楽しむ方に振り向けるか、より攻める方に振り向けるかはライダー次第。
新しいトレンドをシンプルにバランス良くまとめた一台。
MTBはここまで進化したか、と実感できるバイクだ。