ダブル・ストライク!! ~MTB XCOワールドカップ2022 ピドコック&ビダウレ、快進撃~

XCOワールドカップ2022

ブラジルのペトロポリスで開催された2022年の開幕戦では、SRサンツアーが表彰台の頂点に返り咲いた。

男子U23のレースで、2021年U23ワールドカップ総合優勝のマルティン・ビダウレ・コスマン(チリ)が圧倒的な強さで優勝。彼の才能は、その前の週のミシュランテストイベントで、トップクラスのエリート選手たちを相手に勝利を収めたことでより明らかになった。しかし、ブラジルの 「世界最高峰のバトル」には、オリンピック・チャンプであるトム・ピドコックがいなかった。彼は春のクラシックシーズンにはロードレースに参戦し、第2戦のドイツ・アルブシュタット大会でワールドカップXCレースへの復帰を果たしたのだった。

 

XCO 第2戦 アルブシュタッド(ドイツ)


アルブシュタットはクライマー向けのコースとして知られ、シングルトラックの急勾配を延々と登り続ける。しかし、ほとんどの選手が軽量なハードテイルではなく、敢えてフルサスペンションを選択するほどハードなコースでもある。

ピドコックが東京で活躍したタクトeサスペンションシステムを搭載したAXON34 WERXフォーク/エッジフルサスバイクに戻ったのは当然のことであり、ビダウレは同じような装備でアナログのスコットスパークRCを選択した。

金曜日の夜に行われ、翌日のスタート順を決めるショートトラック(XCC)では、男子エリートでピドコックが8位に入り、本戦のクロスカントリー(XCO)でのフロントロースタートを獲得した。

その日のメインイベントである男子エリートのU23レースでは、再びビダウレが優勢となり、最も近いライバルに37秒差をつけフィニッシュ。

そして日曜日、XCOのエリートレースが始まった。スタートラップでは、ニノ・シュルター、アバンチーニ、キャロッド、サルー、ピドコック、クーパー、フルッキガー、ダスカルの各選手がトップ10に入り、争いを繰り広げた。スタート直後から、容赦のないペース配分で後続を引き離しにかかる。しかし、6周のレースの3周目、ピドコックは「ライバルたちの脚がどの程度か試すために」メインの上り坂で急上昇し、ラップ終了までに後続に20秒の差をつけた。そのまま20秒差でゴールし、SRサンツアーは2勝を挙げた。

 

XCO 第3戦 ノベ・メスト(チェコ)


「触らぬ神に祟りなし」ということわざがある。正常な状態のものを、下手にいじってしまうと失敗するということだ。

ビダウレとピドコックは、アルプシュタットで成功したのと同じセットアップのサスペンションをチェコのレースでも選択した。

金曜日のXCCで2位と好調だったピドコックは、ここでもフロントローからのスタートとなった。ここで良いスタート順を得られなければ、このレースには121人のライダーが参加しており、ピドコックが前週のようにフロントローからスタートすることはないのは確実だった。

その前に行われた土曜日のU23のレースは、まさに「前哨戦」であった。このレースでもビダウレが1分以上の差をつけて優勝し、このチリの天才ライダーが3連覇を達成した。

日曜日のメインイベントXCOではスタートループで渋滞に巻き込まれたピドコックだったが、1周目にはトップグループに食い込む。しかし、他のライダーはピドコックに差をつけられてはいけないとわかっていた。シュルター、ダスカル、ハザリー、フルッキガーでパックが形成された。

その後は、ベテランライダー達による激しい攻防が繰り広げられたが、主導権を握るライダーはいなかった。最終的には、最終ラップの上り坂で勝負がついた。ダスカルとピドコックが抜け出し、他の選手は徐々に後退していった。ゴール直前でピドコックは力強いスプリントを見せ、ダスカルの前に立ちはだかり2週連続の優勝を果たした。

ワールドカップのWEB配信元、レッドブルTVのメイン解説者ロブ・ワーナーは、「ピドコックを止められる者はいるか?しかし、同じ質問がピダウレにも当てはまる。」という問いを投げかけた。

なお、ピドコックは只今開催中の世界最大のロードレース、ツール・ド・フランスに出場中。マルチプレイヤーとして才能を如何なく発揮しているのは間違いないだろう。