Felt AR FRD Ultimate インプレ | ヒルクライマーが選ぶメリットはあるのか?

「AR FRDとAR Advancedはどのくらい違うのか?ヒルクライマーが選ぶメリットはあるのか?」

エアロロードやトライアスロンバイクなど自転車におけるエアロダイナミクスのパイオニア的ブランドであるFelt。ARシリーズはそのエアロロードです。

2008年のツール・ド・フランスで登場した初代は衝撃でした。

 

2014年の2代目は、世界No.1の軽量性、重量剛性比、そしてエアロダイナミクスを持ちました。(第三者のテストによるとエアロダイナミクスは現在もトップレベルのようです。)

 

3代目の現行モデルは、モデル発表時に本拠地のカリフォルニアまで行って、セカンドグレードのAR Advanced Uiltegra Di2を試乗しましたし、最近ではラインナップで最もお手頃なAR Advanced 105を試乗して、改めてその性能を確認することができました。試乗して感じた特徴は、より楽に、より速く走れるエアロダイナミクスはもちろん、なにより踏み味の気持ち良さ。癖が無く、走りやすく、ペダリングのトルクがしっとりと路面に伝わるフィーリングです。その走りは富士ヒルや乗鞍のようなヒルクライムレースを目標にしている私にとっても魅力的で、カリフォルニアから帰ってきた後には、AR Advancedを買うか、FR Advancedを買うか本気で悩みました。結局は、ヒルクライムレースを目指すのであればさすがにFRのほうがメリットが大きいだろうと、ARは選ばなかったのですが…しかし、私が乗ったのはAdvancedグレード。フラッグシップのAR FRD Ultimateはまだ乗ったことがありません。

AR FRDとAR Advancedは果たしてどのくらい違うのか?ヒルクライマーが選ぶメリットはあるのか?ずっと気になっていたAR FRD Ultimateのインプレッションです。

インプレライダーの情報
身長:174cm
体重:58kg
タイプ:クライマー
現在のバイク:Felt FR Advanced

 

山岳ロング100km、短い丘を繋ぐ50km、平地練50km、通勤15km✕6の、合計290km走りました。ホイールは自前のカーボンホイールに交換しているので、完成車というよりフレーム&フォークのインプレと考えていただければと思います。実はスニーカーですが富士ヒル会場の試乗コースで試乗したことはあって、その時はFRD Ultimate(以下FRD)はペダリングやコントロールがシビアなので乗りこなす必要がありそうな一方、Advancedのほうがトルクを掛けやすくて最初から乗りやすい印象を持っていました。

FRDにビンディングシューズで改めて乗ってみた感想は「これヤバい」。ちょい乗りでの印象と違って、最初の一踏み目から、癖も無く軽やかに発進していきます。振動吸収性も予想外に高くて、あえて段差を通過してみたりしました。今度はそのまま力強く加速していって、巡航は明らかに楽です。

いつもなら頑張らないとスピードを維持できない40km/hでは、踏まずにペダルに体重を預けるだけでスピードを維持してしまいます。ちょっとした登りでダンシングしてみたりしますが、もう気持ちいいくらい加速が軽いし、バイクも振りやすい。

その印象は距離のあるヒルクライムや急坂でも変わりませんでした。いつもならきつくなって失速してしまうようなシーンでもバイクが助けてくれてもう一踏みできる感覚があります。やはりAR Advancedとは加速や登坂で大きな差があります。Advancedも癖が無くトルクがしっかり伝わる感覚で気持ちよく踏めるのですが、FRDと比べてしまうとよっこらしょっと脚に負担がかかります。この差は大きいです。

ところがFRDならヒルクライムレースを目標にしている私でも大丈夫、どころか積極的に選びたいです。というのもAR FRDはハイエンドバイクながらケイデンスやペダリングに対する許容範囲が広いんです。例えば私も過去に使用していたF FRD(2016年までラインナップされていたハイエンドモデル)は、はまった時の爆発力は目を見張るものがありますが、高いケイデンスのきれいなペダリングしか受け付けない感がありました。選ばれし者のためのバイクですね。同様の感覚は多くのハイエンドバイクに共通するところだと思います。

一方、AR FRDは高いケイデンスはもちろん、低めのケイデンスで踏むペダリングも許容します。ギヤをかけても踏み続けられる感覚があるんです。これはヒルクライムにおいてもアドバンテージです。力をセーブして快適に登り、脚が重くきつくなってきた時にも踏ん張れます。

これは登りだけでなく平地でも同じです。スプリントではいつもより失速ポイントが遠くにあるイメージでスピードが伸びます。そして、もう一もがきができる。

もう本当に「ズルい!」。この一言につきます。ヒルクライマーもこのバイクなら山までアプローチする平地を楽に速くこなして、たくさんトレーニングできます。肝心の登り性能もエアロロードのイメージを覆す軽さで、ライダーとの相性によっては軽量ヒルクライム系バイクを上回るでしょう。

もっとたくさんの方にAR FRD Ultimateを試乗して体感いただきたいです。その際はできればビンディングシューズで試乗いただけたら嬉しいです。

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書いた人→コエサシ