ゆっくり走れる安定性とロードバイクらしいスピードを両立 | Felt VR60 実走インプレッション フェルト

注意:本記事は2019年モデルを紹介しています。2020年モデル以降とはフレームやその他の仕様が異なります。

坂バカスタッフです。

Feltのマルチロードバイク「VR」。

その最高級グレードのVR3を半年に渡り使って、その性能に驚かされました。

VR3のインプレはコチラ

今度は最も下位グレードの「VR60」の性能も気になり、試してみることにしました。

VR60

VR60とは?

VRシリーズはFeltが「マルチロード」「エンデュランスロード」と呼ぶロードバイク。

メーカーによって呼び方が様々なのですが、コンフォートロード、オールロード、グラベルロードと言ったカテゴリーのロードバイクです。

一般的なレース向けロードバイクは基本的に「スピード」のみにフォーカスして作られます。

対して、通勤、街乗り、マイペースなツーリング、限界に挑むロングライド、そしてオフロードと言った「マルチ」なシーンを想定しています。

 

具体的にどう違うのかというと…

 

まずフレームのジオメトリー(各部の寸法や角度)が違います。

低速でもふらつきにくく、安定性を高く。

姿勢も比較的前傾が緩いものになっていて、楽に、長く、乗り続けられます。

 

太いタイヤも特徴です。

一般的なロードバイクは23~25mm幅に対して、28mmが標準で付属。

さらに太い35mmまで交換可能です。

太いタイヤは、滑りにくく、乗り心地も圧倒的です。

標準より太いタイヤに交換すれば、さらにオフロードの対応力を広げられることも意味します。

 

ブレーキはすべてディスクブレーキです。

単に制動力が高いだけでなく、天候や環境に左右されず安定した性能を発揮します。

これらの特徴から、どんな道、どんな環境でもライディングを楽しめるロードバイクがVRです。

 

そんなVRシリーズの中でもVR60は最もお手頃なモデル。

フレームはアルミ。

フォークはカーボン(アルミコラム)。

メインコンポはシマノのクラリス。

※2020~2023モデルはフルカーボンフォーク(カーボンコラム)です。

 

アルミのVRにはVR30とVR40という上位グレードがありますが、その二つとは異なるフレームです。

BB規格は60が「JISスレッド」に対して、30/40は「BB386」。

BB386は幅と径を大きくすることで、フレームチューブとの溶接面積を大きく取ることができます。

簡単に言うと、設計の自由度と剛性を上げることができます。

JISスレッドは昔から使われている規格で、メンテナンス頻度とトラブルの少なさでメリットがあります。

※2020~2023モデルはVR30/40と共通のフレームです。BBは「BB386」。

 

アクスル(ホイールをフレームに固定する部分)は、60が「9mmクイックリリース」に対して、30/40は「12mmスルーアクスル」。

これは太さが違うだけでなく構造がまったく異なり、個人的には12mmスルーの圧勝だと思います。

構造的にフレームとホイールの一体感が全く異なってくるので、ペダリングに対するレスポンスが良いです。

クイックリリースだと微妙にホイールの固定がずれてディスクブレーキのローターとパッドが接触しがちなのですが、それも発生しません。

クイックリリースのメリットとすると、昔からある規格のため交換用パーツが豊富なことでしょう。

※2020~2023モデルはVR30/40と共通のフレームです。アクスルは「12mmスルーアクスル」。

 

フレーム細部の造り込みも結構違いがあり、30/40の方がより複雑にチューブに潰しを入れています。

溶接部の処理も30/40の方が綺麗です。

※2020~2023モデルはVR30/40と共通のフレームです。

 

このように、グレード的には明らかにVRの末弟なわけですが、ジオメトリーは共通です。

サイズで剛性や柔軟性を変えるFeltこだわりの「サイズ専用設計」もしっかり施されています。

例えば、ヘッドチューブのサイズを2種類使い分けています。

この価格帯でそんな面倒なことをしているのはFeltだけです。

これはフレームサイズ毎に必要な剛性や柔軟性を解析して、専用の素材を用意するため、非常に手間とコストがかかります。

フレームサイズが4つあるとすると、4モデルの自転車を作るのとほぼ同義です。

 

そんなVR60。

上位グレードで感じた感動は変わらずあるのか??

試してみたいと思います。

 

マイペースで走ってもOKな懐の深さ

まず乗って感じるのは、やはりリラックスできる安定感です。

ロードバイクというのは基本的に速く走るための造りのため、ゆっくり走ると、ふらついたり、振動が気になったり、身体が痛くなったりしがちです。

ところがVRはゆっくり走っても違和感がまったくありません。

安定性の高いジオメトリーから、ゆっくりでもハンドルはふらつかず、リラックスできます。

太めのタイヤでラフな路面の振動も気になりません。

前傾が緩いのも大きいですね。

特に通勤でPCやカメラの入った重いバックパックを背負っていると、一般的なロードバイクの前傾姿勢はきついです。

VRの安定感は手放せません。

 

オフロードを高いレベルで走れる

VRは最大35mm幅のタイヤ対応で、オフロードを走れます。

今どき、太いタイヤに対応したロードバイクは他にもあるのですが、VRほどアグレッシブにオフロードを走れるものには出会ったことがありません。

独自形状のフレームにわずかなしなりを持たせたことで、タイヤを路面に押し付け、滑らないんです。

ジオメトリーも前後のタイヤにしっかり体重が載る設計になっています。

普通はオフロードで立ち漕ぎするとリアタイヤが滑りやすいのであまり立ち漕ぎ出来ないのですが、VR60はしっかりタイヤが路面をつかんでくれます。

垂直方向の柔軟性を作ってトラクションを高めるシートステーが良い仕事してますね。

ちなみに純正のタイヤは28mm幅のセミスリックですが、このタイヤでも慣れればオフロードを楽しめます。

 

レースロードに劣らない剛性がある

安定性が高い。オフロードを走れる。

これだけなら他にも同じようなバイクはあります。

VRならではの特長は、これらを備えつつ「走る」ことです。

簡単に言うと「速い」ということです。

決して柔らかいバイクではなく、なかなかしっかりとした剛性があります。

事実、このバイクでレースバイクに混ざって平地の朝練(巡航35~40km/h)をしましたが、まったく問題ありません。

手で持ち上げると重量はあるのですが、いざ跨がると走るバイクです。

漕ぎ出しもそれなりの重さがありますが、いざスピードを出そうとしたときにしっかりと反応してくれる剛性があるんです。

 

ホイール交換で大幅に軽量化できます

VR60のカタログ重量は10.7kg(56サイズ)。

同じカテゴリーの同価格帯と比べたら軽い方です。

ただ、普段は6.8kgのバイクに乗っている私からすると、持ち上げるとズッシリと重いというのが正直なところ。

軽量化するならホイールが最も効果的です。

 

付属ホイールの重量をチェックしてみました。

フロント 973g (ローター込重量1080からローター107を引いた計算値)

リア 1443g(タイヤ&チューブ込重量1975からタイヤ430とチューブ102を引いた計算値)

前後 2416g

なかなか重量があります。

ホイール交換だけで大幅に軽量化できますね。

 

オススメはAlexrimsのRXD3。

https://www.riteway-jp.com/pa/820505.html

重量は1550g。

タイヤもスチールビードのものが付いているので、サーファスのセカスポーツ 28c (300g)に交換しましょう。

 

これだけで、1100gも軽量化できます。

この差はかなり大きいです。

漕ぎ出しの重さはこれでかなり軽減できます。

もちろん単に持ち上げたときも大違いです。

 

その他気に入ったポイントと詳細画像

トップチューブには専用バッグを取り付けるためのボルト穴を装備。

バッグはこちらの記事で紹介しています。

 

54サイズ以上のフレームだと、ダウンチューブに2箇所のボトルケージ用ダボ穴があります。

 

現行クラリスは、ボルトによる調整でレバーの位置を近くできます。

ドロップハンドルの下側を握ってもブレーキをかけやすいのが気に入りました。

 

ハンドル下部がハの字状に広がったオフロードでコントロールしやすいハンドル。

Feltのシクロクロス Fxシリーズと同じハンドルです。

 

ブレーキが思いのほか良かったです。

機械式のディスクブレーキですが、「対抗ピストン」というシステムです。

一般的な機械式は、片側のディスクパッドを動かして、ローター(金属の円盤)を挟みます。

構造上どうしてもローターを変形させながらブレーキを掛ける形になるため、ブレーキレバーの引きが重くなってしまいます。

特に形状的にレバーを強く握りにくいドロップハンドルの自転車では顕著です。

対抗ピストンというのはその名の通り、両側のディスクパッドを動かして、ローターを挟むシステムです。

ほぼローターの変形は発生しないので、ブレーキの引きが非常に軽くなります。

この価格帯の自転車で対抗ピストンを採用しているものはほぼありません。

Tektroの対抗ピストン式ディスクブレーキは初めて触りましたが、制動力も引きの軽さも優秀でした。

 

リムは左右非対称に設計されています。

自転車の後輪は必ず右側にスプロケットやチェーンが付いた非対称です。

そこでリムを逆方向にあえて非対称にすることで、ホイール全体のバランスを取っています。

 

ハブはラージフランジ。大きなボディでホイール剛性を高めます。

 

ディレーラーとシフターはシマノ クラリス。スプロケットは11-34Tで軽いギヤを装備しています。

ちなみにSunrace製のスプロケットは実測355g。

 

サドルは比較的レーシーなものです。個人差はあると思いますが、痛みが出ることもなく、違和感なく使うことができました。

 

VRのオススメの使い方は?

①林道ツーリング

荒れた舗装林道やグラベル(砂利道)を走るならVRはベストな選択だと思います。

日本の林道は、傾斜がきついことと、舗装路を走ってアプローチしなくてはいけないことが特長です。

VRはオフロードに対応するロードバイクの中でもスピード性能が特長です。

舗装路のアプローチやきつい登りがあっても、オフロードを楽しむ余裕をライダーに残してくれます。

 

②キャンプツーリング

100km以上の長い距離を走るキャンプツーリングもVRは得意です。

キャリアを使わないバイクパッキングスタイルの軽量装備との相性が良いです。

軽量なバイクと装備で距離を稼ぐイメージです。

グラベルロードでキャンプツーリングに必要なもの

 

③通勤/通学

VRのアップライトなポジションは、バックパックを背負った通勤であっても快適です。

通勤って、仕事で疲れてなんだかゆっくり走りたいというときもあれば、スピードを感じてリフレッシュしたいというときもあると思います。

低速安定性が高くて、かつ踏めばスピードにのるVRは、通勤の最高の相棒です。

 

④エンデューロレース

VRはレースには対応しないのかなと思われるかもしれませんが、サーキットで行われるようなエンデューロレースにはむしろ最適です。

エンデューロレースはペースの変化が少ないことが特長です。

ペースの変化が少なければレースバイクのような深い前傾姿勢はそこまで必要とされません。

淡々と高速を維持するエンデューロレースにオススメです。

 

もちろんこれだけでなく、街乗り、河川敷サイクリング、シクロクロスなど、使い方は選びません。

 

まとめ

リラックスできる安定性と、オフロードでの高い走破性。

これらを持ちながら、ロードバイクらしいスピードがある。

VRの末弟モデル「VR60」も、ハイエンドモデルVR3で感じた今までにないフィーリングは変わりませんでした。

違いがあるとすると、加速の軽さは価格差だけのものを感じます。

私なら、ホイールを交換して、ゆくゆくはコンポも交換して…

それだけのポテンシャルをVR60には感じたのでした。

https://www.riteway-jp.com/bicycle/felt/bikes/vr60_8081/