Felt「AR FRD」インプレッション

坂バカスタッフRYOです。

Feltのラインナップの中では、スタンダードなFRシリーズが好みの私です。

理由は単純で、登りが好きだからです。

ただ、エアロロードのARシリーズも本格的に乗り込んでみたいと思っていました。

今回、ARシリーズのフラッグシップ「AR FRD」を1ヶ月間レンタルできることになったので、私なりにインプレしてみたいと思います。

 

インプレライダー紹介: 坂バカプロモーションスタッフRYO

身長174cm、体重58kg

最近測ってませんが、1年くらい前に測ったFTPは265w(4.6w/kg)

タイプとしてはクライマー。平地も走れなくは無いが、速くは無い&嫌い。

スポーツバイク歴13年

ヤビツ峠(名古木交差点~)のベストタイムは36分。八王子市和田峠は15分

Mt.富士ヒルクライムは69分

JCRCはCクラス。ツールドおきなわ市民210kmはなんとか完走レベル。

 

AR FRDとは?

インプレバイク:Felt AR FRD フレームキット 2017モデル 540mm

コンポ:Shimano Ultegra 6800、クランクのみDura Ace 9000

ホイール:A Class ALX475(出来るだけ公正なインプレになるよう、この冬ずっとトレーニングに使っているホイールです。)

 

ARシリーズは2008年ツール・ド・フランスで発表された本格的なエアロロードの先駆け的存在。

当時、単なる楕円チューブを使ってエアロを意識したバイクはありましたが、航空力学を応用した本格的なエアロロードはまだマスプロメーカーから発売されていませんでした。

 

THOMAS PETERSON ON STAGE TWO OF THE TOUR MEDITERRANEAN

当時のガーミンスリップストリームチームが、これまた当時としては衝撃的だったアーガイル柄のウェアを纏ってARを駆った光景は多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか?

 

ARシリーズ第2世代のウインドトンネルでの開発風景

現在のARはそれからモデルチェンジを行った2世代目です。

Feltはトライアスロンバイクの開発から始まったブランドなこともあり、エアロに関してはかなりのノウハウの蓄積があります。

実際、現行モデルの発表時には各社のエアロロードで同じサイズで同じパーツアッセンブルのものを用意して風洞実験を行い、トップの数値を叩き出しています。

とはいえ、ぶっちゃけエアロ性能って条件や計測方法によって結果は変わってきてしまいそうですし、実際のところどうなんでしょう?(笑)

 

そんな中でAR FRDについて言える確実なことは「軽い」です。

フレーム単体「908g」(サイズ56、塗装/小物抜き)というのは、エアロロードとしては圧倒的な軽量性です。

その他の特徴としては、基本的にノーマルロードのFシリーズと同じジオメトリーなこと、メンテナンス性に配慮して極端な専用パーツは使っていないことなど、堅実な設計があげられます。

 

「FRD」というのはFelt Racing Developmentのイニシャルでフラッグシップモデルにもその名が付けられます。

FRDは最高の素材を使っていることは当然なのですが、フレーム作りで最も重要なのは製造行程です。

 

カーボンフレームはカーボンシートを適材適所に重ねることで形作られます。

この行程が緻密で膨大なのがFRDです。

薄いカーボンシートを細かく重ねることで、必要な部分に無駄なく剛性を与えて、剛性や強度が求められない部分は極限まで素材をカットしています。

そんな究極のエアロロードをインプレします。

 

確実にメリットを感じる高速域

剛性を保ちつつ極限まで絞ったヘッド。下ベアリング径は1-1/4″

今回の総走行距離: 600km

平地練、山岳練、通勤とあらゆるシーンを試しました。

 

エアロロードなのでやっぱりエアロ効果はあるのかというのがまず気になるところだと思います。

結論から言うと、低い速度域ではなんとな~く楽なのかな~??という程度ですが、40km/h前後くらいまで速度が乗ると明白なメリットを感じます。

ノーマルロードより速度を楽に維持できます。

また向かい風ではそこまでスピードを出さなくてもメリットを感じます。

いつもなら風に押し戻される感覚を強く感じますが、風の間をすり抜けるような感覚で進んでいけます。

 

スプリントが伸びる

トップチューブとダウンチューブが繋がるようなボリュームのあるヘッドによる剛性も、高いスプリント性能を支える

もう一つ、ノーマルロードに対してメリットを感じるのはスプリント。

インプレ前はプレーンな形状のFRシリーズの方が踏みやすいのでスプリントには合っていると思っていました。

実際乗ってみると、失速せずに気持ちよく踏み続けられて、スピードが想像以上に伸びます。

踏みやすさはFRDグレードのハイレベルな素材とカーボンレイアップ設計の細やかさによるものと想像します。

以前、F FRDを使っていた時も同じような感覚がありました。

下位グレードと比べると、踏んでわずかに変形した後の「戻り」が速い気がします。

この踏みやすさに加えて、フレーム形状の空力性能で、スプリントが得意なバイクです。

 

扱いやすいエアロロード

エアロロードの中にはコーナーリングに癖があるバイクもあります。

ARのコーナーリングは非常にニュートラルです。

ジオメトリー的にはコーナーリングに定評あるFシリーズとほぼ一緒。

ノーマルロードと同じ感覚でスパスパ曲がってくれます。

試乗した弱虫ペダルサイクリングチームの前田公平選手も同じような感想を教えてくれました。

また、規格的にもあまり特殊なものは使っていません。

ブレーキもフロントは通常のロードキャリパー、リアはダイレクトマウントで、前後ともシマノのパーツを使用できます。

エアロロードとしては非常に扱いやすくユーザーフレンドリーです。

 

想像したより登りもサクサク

エアロロードというと登りはいまいちなイメージもあると思います。

私もそんな風に思っていましたが、意外に登りもいけます。

純粋に登り重視の方にはFRシリーズをお勧めしますが、そうでなければ問題無いと思います。

ただしペダリングはバイクに合わせてあげる必要があります。

特にダンシングは自由度が低く、バイクに合ったダンシングを強いられます。

バイクを大きく振るような走り方はフィットせず、縦に入力するようなイメージです。

またケイデンスが下がると極端に走りが重くなるので、ケイデンスを保てるギヤ比が必要です。

加速のダンシングでは、バイクをあまり振らず、縦にしっかり入力するようイメージ。

一定ペースのダンシングでは、コンタドールのような感じで、ペダリングに合わせてハンドルを切るイメージだと進んでくれると感じました。

 

グレードによる差は大きい

F1や航空宇宙産業でも使用される最先端カーボンシート「TeXtreme」をレイアップ

今回インプレしたのはフラッグシップの「AR FRD」でした。

ARはすべてのグレードで同じ型、同じ形状です。

違いはカーボン素材、成形方法、そしてカーボンシートのレイアップ設計。

ARシリーズはFRシリーズに比べると複雑な形状のため、これらのグレード差が如実に現れると感じました。

AR FRDとAR5の性能差はやはりそれなりに大きいです。

特に登り性能を求める方は出来るだけ上位グレードを選択されることをお勧めします。

FRDグレードには、単なる走行性能以上の感動できる気持ちよさがあります。

可能であれば是非「FRD」を体感してほしいものです。

 

AR FRDインプレまとめ

AR FRDは、高速巡航で逃げたいライダーやスプリントで勝ちたいライダーに確実なアドバンテージを提供してくれます。

 

横風をヨットのように推進力に変える楕円形状のダウンチューブ

ただし、ライダーがバイクに合ったペダリングをしてあげる必要はあります。

縦方向にしっかりトルクを掛ける意識です。

ダンシングをあまりしないライダーや、ダンシングでバイクを大きく振らないライダーは、最初から違和感なくフィットすると思います。

私は振るダンシングを多用するライダーですが、一度走らせ方を掴みさえすれば問題無いと、このインプレで確信を得られました。

 

ポリマーを内蔵して振動吸収性を高めたサドルクランプ

振動吸収性を高めるギミックもありますが、正直に書くとフレーム全体として振動吸収性は高くありません。

とは言え、しっかりペダルにトルクを掛けられる一定レベルのライダーであればそんなに気になることは無いと思います。

そういう意味でも、レーシングバイクであることは間違いありません。

 

ヘッドチューブのクビレ。カッコいいです

高い空力性能だけでなく、ロードバイクとして基本的な性能をしっかり網羅していることもAR FRDの美点です。

ペダリングをバイクに合わせるところ以外は、コーナーリングはニュートラルかつ鋭く曲がる、スプリントに対応するヘッド剛性、BB周りの粘りのある剛性、そして登りも軽快でロードバイクとしての完成度が高いです。

 

タイヤを包むような形状のシートチューブ

BB周りはかなりゴツく、脚にくるような固さを想像するかもしれません。

実際にはごくわずかに粘るような感覚がありながら軽快で、失速せずにぺダリングを続けることが可能です。

 

シートステーはブレーキをチェーンステーへ移動することで設計の自由度が向上

ロードバイクとしての性能は妥協できないけど、高速域で勝負できるアドバンテージを求めるライダーにお勧めします。

パッと見は直線的でシンプルながら、細部に目を凝らすと複雑に変化するフレーム形状は満足度が高いはずです。

 

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AR FRD Frame Kit