FELT FRカーボンフレームのディテール形状を解説

坂バカスタッフRYOです。

昨年、長くFELTの看板だったFシリーズがモデルチェンジして誕生したFRシリーズ。

ブレーキとブレーキブリッジを廃したシートステーとチェーンステーのダイレクトマウントブレーキ、BB386の採用と言ったところが、パッと見でも分かる変更点だと思います。

でも実車をよく見ると、フレームのすべてと言って良いほどに形状が一新されています。

 

前回のモデルチェンジからFELTのエンジニアが蓄積してきたフレームの解析技術。

それにより緻密に形状とその効果を分析することが可能になりました。

今回はFR6のフレームを見本として、フレームの細部形状とその意味を解説します。

 

まずはもっとも特徴的なシートステー

ブレーキはチェーンステーへ移動。

しかもブレーキブリッジもありません。

FELTが解析したところ、従来のブレーキブリッジは剛性にほとんど寄与していなかったそうです。

そのブレーキブリッジがなくなったことで、シートステーに柔軟性が生まれ、より軽量にもなりました。

 

よく見るとエンド側とシートチューブ側では形状が変化しています。

シートチューブ側は、横に平べったい三角形断面。

この形状はブレーキブリッジがなくなったからこそ実現できました。

垂直方向の柔軟性を作る一方で、横方向の剛性を高めてリアバックのねじれによるパワーロスを防ぎます。

 

シートステーは、シートチューブの横を通ってトップチューブに接続

振動がシートチューブだけでなくトップチューブへ分散されることで、サドルへの突き上げを防ぎます。

ステーの左右間も広くなり、これも横剛性を作り出します。

今までシートステーからかかる負荷をシートチューブ1本だけで支えていたのが、トップチューブとシートチューブの2本で支えるように。

シートチューブの厚みを薄くすることが出来て軽量にもなりました。

 

トップチューブはシートチューブ側が横方向に平らな形状

シートステーの柔軟性をサポートする形状です。

 

実際に走ってみると、乗り心地が良くなってるのはもちろんなのですが、荒れた路面でスプリントをしてもリアが跳ねにくいです。

路面にリアタイヤがしっかり食い付いて安心してもがくことができました。

 

BB規格は以前のBB30からBB386に変更

BBパーツ圧入部の幅も径もボリュームアップした規格です。

 

こう言った大径BBを採用する意味って単純に剛性を高めるためと思われがちですが、実はそんな単純な話ではありません。

従来の小さなBB規格って、フレーム形状の設計の自由度がとても低いんです。

理想の性能を実現できるフレーム形状にしようとしても、BBサイズの制約で限度があります。

小さなBBの回りにたくさんカーボンを盛ればある程度出来なくは無いのですが、無駄に重くなってしまいますよね?

FRはこのBB386の幅を目一杯使ってダウンチューブを幅広にしています。

ご想像通り、ねじれがほとんどなく剛性は高いです。

ただ、踏んだ時の反応は跳ね返される感じではなくとても素直。

基本的には固いんですが、最後だけちょっと優しいという絶妙な感覚です。

 

BB386は幅が広いので、チェーンステーの付け根も広くできます。

結果、FRは28cタイヤまで対応します。

ISO規格のタイヤクリアランス4mm確保基準で28cまで対応なので、実際にはもう少し太いタイヤも履けなくはないです。

 

ちなみにBB386規格はBB30専用クランクを除くほとんどのクランクセットを使える点も良いと思います。

カートリッジベアリングはフレームに直接ではなく、樹脂のスリーブを介してフレームに圧入されるので、フレーム側の精度にも依存しません。

 

シートステーから外したブレーキはチェーンステーへ

もともと剛性が必要なBB周辺に、剛性が必要なブレーキ台座を取り付けるというのは、とても合理的です。

その分シートステーは軽量になります。

ブレーキが下の方に付いて、重心は低く、バイクの真ん中に近くなります。

チェーンステーのブレーキに食わず嫌いされる方がとても多いのですが、得られる性能的メリットは大きいです。

ちなみにFR1を使用する弱虫ペダルサイクリングチームのメカニックに聞いてみましたが、メンテナンス性は変わらないとのことです。

あえて言えば、走行中にいじることができないくらいです。

 

チェーンステーは非対称

ドライブトレインはバイク右側に付いているので、フレームにかかる負荷も非対称です。

左右非対称な変形を防ぐには、左側を太くするそうです。

 

同様にシートチューブも左右非対称。

シートチューブのボトルダボが中心からずれてない?とたまに聞かれますが、シートチューブ自体がわざとオフセットしているためです(笑)

 

フォークも新形状

よく見ると、フォーク内側がボコッと膨れた菱形断面。

リアバックの設計思想と同じように、垂直方向の柔軟性を高めつつ、横方向の剛性を失わないようにしています。

 

カーボンドロップアウト

カーボンの最下位グレードのFR6であっても、カーボンエンド。

 

もちろんリアエンドもカーボン。

カーボンエンドは扱いがデリケートなのではないかと心配な方もいるかもしれませんが意外と頑丈です。

少なくとも私はガンガン使っています(笑)

 

ディレーラーハンガーも新しくなりました

フレームを両側から挟む形で、ボルトも2本。

フレームとハンガーがガッチリと一体化され、変速時の剛性が上がっています。

 

フレームプロテクター

チェーンステー側面には、チェーン落ちからフレームを守るアルミプレートがあります。

 

ヘッドチューブにはケーブルポート

リアブレーキワイヤーと電動コンポのシフトケーブルはここからフレーム内蔵します。

 

ワイヤールーティング

リアブレーキワイヤーはダウンチューブ裏から出てきます。

ヘッドチューブのケーブルポートからここまでのフレーム内部には、ワイヤーの通り道となるガイドが設けられているわけではありません。

が、インナーワイヤーはフレーム内部で真っ直ぐ引っ張られている形です。

ここもFELTらしく、とても合理的です。

 

機械式コンポの場合は、シフトワイヤー外装です。

理由は二つ。

一つはレース現場でのメンテナンス性の高さ。

 

このワイヤーガイドはネジ止めされています。

電動コンポで使用する場合は簡単に外せます。

ワイヤーガイドを固定するために、フレームには小さな穴が二つ。

実はワイヤー内蔵だと、ワイヤーを通すためにもっと大きな穴を開ける必要があります。

大きな穴を開けると、強度と剛性を確保するためフレームにカーボンシートを重ねて補強しなくてはならず重量が嵩みます。

これが二つ目の理由です。

 

まとめ

FRシリーズは派手さはあまり無いかもしれません。

でも細部を見れば見るほど、エンジニアが徹底的にこだわって煮詰めて完成したバイクだということが分かります。

「合理的」かつ「乗り味」を徹底的に追求したバイクという印象です。

 

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新FELT FR ファーストインプレ~Fとの違いを解説~