坂バカスタッフです。今回はドイツはケルン発のアドベンチャー志向ブランド Bombtrack(ボムトラック)のHook EXT(フックEXT)をインプレします。
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Bombtrack Hook EXT
ブランドとしてはグラベル&オールロードに分類しています。グラベルバイクと言っても色々あるのですが、キャンプ装備、もしくはコーヒーセットなどを積んで長いグラベル(砂利道や軽いダート)を駆けるツーリングやアドベンチャーに適したバイクです。
中でも特徴的なのがデフォルトで装着されたMTB並みに太い650B×2インチ(約50mm)のタイヤ。MTBで走るようなトレイルも(それなりにテクニックは求められますが)走れてしまいます。
もう一つの特徴はColumbus社のクロモリチューブによるフレームです。クロモリとはクロムとモリブデンを加えたスチールで、自転車フレームの素材としては最も強度や耐久性に優れています。何よりそのシンプルなシルエットやスタイルはハマる人にはドンピシャでしょう。コロンバスというのは自転車レースの本場イタリアのスチールチューブ製造で最も成功した伝統あるメーカーです。
とにかく進む感触が力強い
フックEXTはレース向けではなくツーリング向けですし、重量もカーボンやアルミと比べて重い、しかもMTBの極太タイヤということで走りの重さを想像するのですが、想像していた走りとは全く違いました。ペダルを踏む感触は力強く踏み応えがあり、力が逃さずスピードに変換されている感覚があって楽しいです。クロモリフレームは剛性が低いというイメージがある方も多いと思いますが、これはかなり剛性が高いです。というのもクロモリフレームは細いチューブで作られる(素材そのものの強度が高いので、細くてもフレーム全体として十分な強度が出せる)傾向があるのですが、フックは太いチューブで構成されています。特にダウンチューブは実測42.3mmでかなり太い(昔ながらのクロモリは28.6mm)です。素材の強度が高くて太いとなれば想像できると思うのですが、固いんです。もちろんカーボン製レースバイクと違って、加速にそれなりに重さはありますし、ずっと高強度で踏み続けていけるような感覚はありません。それでもいざ踏んでみようと思った時の感触がとてもいいんです。先を急がないツーリングであっても、楽しくなってペダルを強く踏みたくなる時ってありませんか?そんなシチュエーションで楽しいのがフックEXTです。
スムーズな可動部と耐久性の高いフレームによる抜群の安心感
乗っていて微塵もデリケートな部分を感じさせない安心感もフックEXTの魅力です。まずはクロモリフレーム。クロモリと行ってもレースバイク向けの肉薄でデリケートなパイプもあるのですが、コロンバスのCROMORというのはベーシックなパイプ。特にダートを走ってると、飛び石が当たったり、倒してぶつけてしまったりといったことも普通に起こりますが、相当な衝撃でないと簡単には壊れたりしなそうです。仮に凹んだりしてもそう簡単に割れたり折れたりすることは無いでしょう。
またステアリングやクランクといった回転部の動きが軽くて滑らかで、不具合が起きにくいシステムであることも気に入りました。特にハンドルを左右に動かすステアリングが軽いです。ステアリングをつかさどるヘッドパーツは昔ながらの圧入式。圧入式を採用するスポーツバイクは減ってきているのですが、ベアリングの回転が軽い、長年の使用で具合が悪くなってもフルセットで交換できるというメリットがあります。ヘッドパーツは目立たないですが、曲がるときだけでなく直進しているときでさえバランスを取るために微妙に動き続けている重要なパーツです。私はここの回転の軽さが走行感の軽さに大きな影響があると感じています。
さらにクランクを支えるBBはT47という規格です。BBはペダリングをダイレクトに受け止める場所だけに音鳴りなどのトラブルも多いです。T47はスレッド(ねじ切り)方式でBBパーツをねじ込むのでトラブルが起きにくいんです。耐久性と信頼性の高い仕様で乗っていて絶大な安心感があり、必要なメンテナンスを怠らなければ死ぬまで使えるバイクがフックEXTです。
何でも積める積載力は最高レベル
最近のグラベルロードはフォーク横やトップチューブを始めとしたあらゆるところにバッグやボトルケージを装着するためのダボ穴が配されるようになりましたが、その中でもフックEXTの積載力は充実しています。
またフレーム、フォークともにかなりタフに作られていますので、重い荷物を積んでも安定感と安心感があります。重い荷物を積むと走行中にフォークがぶれたり、よじれたりするフレームも多いのですが、これは荷物を積んでこそ本領を発揮するといった具合です。
700Cホイールを履かせればより軽快な仕様に
フックEXTはデフォルトで650BのMTB向けのホイールが装着されています。その割には実際に乗ると進む感覚があるのですが、やはり舗装路や簡単なダートだと相対的に重さを感じます。そこで700Cのロード/シクロクロス用軽量ホイール Alexrims CXD4と33Cのブロックタイヤに交換してみました。重量は11.1キロから10.2キロ(ともにペダル無し)で約1キロ軽くなりました。
結論から言うと劇的に走りが軽くなります。走行感やハンドリングにも違和感ありません。バイクロア(シクロクロススタイルのお祭り的レース)のファンクラスも走ってみました。リザルトは当日エントリーの後方スタートで8位とまずまず良いのではないでしょうか。タイトなコーナーもきちんと曲がれるし充分レースを走れるのではないかと思いました。ただし当然ですが普段使用しているフルカーボンのシクロクロスレーサーと比べると加速のだるさやスピードの維持で分が悪いです。でも劇的に大きな差ではなく、脚の差で簡単にひっくり返るレベルではあると感じました。舗装路を中心により軽く走れる仕様にしたい方は700Cホイールでの使用もおすすめです。