こんにちは!ロードレーサーの鈴木史竜です。
本日は、ディスクロードの軽量化に向けた機材紹介になります。
ディスクロード全盛になった昨今、私が主戦場とするJCL(ジャパンサイクルリーグ)でも、ほとんどのプロチームがディスクロードを採用しています。
目次
ディスクロード軽量化にKCNC レーザーローター
リムモデルよりも重さが気になるディスクロードにおいて、軽量化は非常に重要な問題。この度、軽量パーツとして名高い「KCNC レーザーローター」を、練習使用を経て実戦に投入しました。ブレーキという安全面でも重要なパーツをインプレしていきます!
レースレベルで武器となる軽量化を、制動力、デザイン性、コストと高い次元で両立しているローターであると感じます。特に、ヒルクライムを中心とした純粋な登りで勝負が決まるレースであれば、このローターは非常に強力な武器になると思います。
軽量性、制動力、コストと耐久性等、それぞれ順に触れていきます。
まずは、何と言っても軽さ。
前後(F:160mm/R:140mm)で、合計135gは、世界最軽量を謳っています。
ローター自体が6ボルト式である為、6ボルト式ホイールを使用している方にとってはこの数値通りの軽量化が図れます。
しかし私は、主にセンターロック式のホイールを使用しています。この場合も、KCNCのセンターロックアダプターを間に挟むことで、簡単に換装する事出来ました。
アダプター約29g×2の58gを足しても、前後で193gです。この差は、純正ローターから同じホイールで変更した際に、違いを体感できるレベルのものでした。ダンシングの振りが軽いのは最も分かりやすい違いですが、シッティングでも多くの方は微妙にバイクが左右に揺れていると思います。ロードバイクに長らく乗っている方であれば、シッティングの微妙な揺れ具合でも軽さを体感できるレベルであると思います。
しかも、このアダプターを入れる事による恩恵として、デザイン性まで高める事が出来る事が私のお気に入りポイントです!
少し性能面からは話がそれますが、自転車に乗る時に非常に重要な要素の1つに、“自分の自転車が好き”である事が挙げられるはずです。やはり相棒である自転車はかっこいいので!
KCNCは各パーツのカラーバリエーションが豊富で、決戦に使えるレベルの機材でドレスアップが出来ることも嬉しい点です。このパーツはブラック、ブルー、ゴールド、レッドの4色展開されているので、ドレスアップが可能です。
私は冗談ではなく、バイクの目に入る場所に好きなカラーが配色されているだけで心理的にプラスがあると思っています。ちなみに私は、練習では気持ちを高めるために赤を。レースでは自然とテンションが上がるので、落ち着いて集中できる青を使用しています。
このカラーバリエーションと、軽量性を両立できるところが1つ目の大きな強みであると感じています。
次に制動力。
これに関しては、少しローターの特性に慣れる必要があると考えています。率直に言えば、制動力は純正よりも少し控えめであると感じます。
特に、ブレーキを握り始めた瞬間は、“ガツン”と効くタイプではなく、“じわっ”と握っただけ減速する感覚があります。ローターをパッドで抑えつけているというよりも、ローターを握っている感覚を手で感じる事が出来るようなイメージです。この辺りは、比較的ローターがしなやかであるが故かもしれません。
一方この特徴は、公道走行中やレースの中で強みにもなり得るものです。ガツンと効くタイプよりも、減速中に減速幅のコントロールがしやすいと感じました。これは、少しだけ握りを弱める事で減速を緩め、集団内で前走者の間に入り込む事や、ハンドルが並んでいる横のライバルよりも少しだけ前に出て位置をキープするといったような、細かいコントロールがしやすい利点となります。一見地味かもしれませんが、レースではとても重要な要素になるため、コントロールがしやすい制動力は大きな強みです。こうしたコントロールしやすい点は、公道でも安全性に繋がるはずです。
制動力については、各ローターによってクセがあるのでしっかりと認識して慣れる事も重用ですが、レース使用でも十分に戦える制動力だと感じています。
最後に、耐久性とコストです。
見た目からは、耐久性が非常に心配になる肉抜き具合が見て取れます。
結果から言うと、耐久性が高い方ではないものの、値段を考えればコスト以上の耐久性を持ち合わせているのではないかという感想を持ちました。
私は本記事執筆時点で、約1800km使用をしました。天候に関わらず走行し、5%~10%の登りを反復する様なメニュー中心の、機材的には過酷な状況下です。
使用前の初期状態では厚みが1.85mmに対して、1800km使用後の計測では、F:1.61mm/R:1.65mmでした。消耗したのは、F:0.24mm/R:0.20mm分という事になります。
この結果から、使用期限の1.5mmに達するまでの使用可能距離は、F:2500km~2600km/R:3100km~3200kmほどになるのではないかと考えています。
通常使用ではフロントでも3000kmほど使用できるそうで、今回の結果は消耗の早い部類のデータだと思います。しかし、この軽量具合で上記の距離を使用出来れば、充分安心して使用できる軽量機材なはずです。
また歪みについても、通常走行ではほとんど気にならない程度であると感じています。バイクを重ねる時の接触や、輪行等での物理的接触では性質上曲がりやすいと感じるので、注意が必要ではあります。
しかし最も重要なポイントは、充分な耐久性があろうとも、消耗具合をしっかりと確認する必要がある事です。本来これは、レーザーローターに限った話ではありません。リムモデルでも、リムやブレーキパッドの消耗具合を越えて走行すれば非常に危険であり、ブレーキがきかなくなる事は想像しやすいと思います。ローターはあくまで消耗品であるので、レーザーローターは1.5mmを切れば即交換です。
価格も1枚3000円ほどという事で、例え使用距離が純正ローターの半分以下の距離でもコストパフォーマンスとしては充分高い部類に入るかと思います。しかも、値段が安いからこそ、寿命が来た時に遠慮なく新品に交換出来ると感じています。
自転車全体がスピードの出る危険な乗り物という前提はもちろんの事、そのパーツの中でもブレーキは特に危険に繋がる部分であるため、消耗品として注意をしなければいけない製品であると考えています。自転車に乗る上で、安全部品に気を配る事は、自分の安全の為だけでなく、周りの人の為にも必須です。
KCNC レーザーはレースレベルで武器になるディスクローター
ここまでいくつかの面からレーザーローターを見てきましたが、軽量性と、制動力から生まれるコントロール性、デザイン性、そして安全に運用可能なコストパフォーマンスが強みであると感じています。
特に、ヒルクライマーの方や、登りが重要になる決戦用にこのローターを使用する事は、非常に大きな武器となり得ます。レースに出ない方でも、バイクの軽量化は疲労の軽減につながりますし、近場のKOMを狙いに行くときの相棒には最適です。
私自身使用する前は、正直ローターはハブ中心に近いので走りではあまり軽量化を体感できないかと思っていました。しかし、ダンシングはもちろん、シッティングでも細かなバイクの振れの感触が微妙に変わる事を実感出来ました。その為、レースの少し前に使用を開始して、慣れた上で決戦に挑むのがおすすめです。
レースレベルでも武器となる軽量性を、制動力、デザイン性、コストと両立している、非常に攻撃力の高いレーザーローター。特に登りで勝負をしたい時の飛び道具として、大きな武器になるローターであると感じました。
鈴木 史竜 (すずき しりゅう)
1998年4月16日生まれ
静岡県出身。都内の大学に通学しながらプロサイクルロードレースリーグのJCLに参戦中。
2014年 全日本選手権ロードU17:13位
2015年 Team Eurasia-IRC TIREサイクリングアカデミーで欧州遠征
2015年 四日市全国ジュニア自転車競技大会:12位
2016年 全日本選手権TT(ジュニア):9位
2016年 Team Eurasia-IRC TIREサイクリングアカデミーで欧州遠征> 2017年 Team Eurasia-IRC TIRE 正式加入
2017年 Tour de Nouvelle-Caledonia (10日間のステージレース)完走
2019年 全日本選手権TT(U23):19位
2019年 UCI ツールド熊野 出場
2019年 ケルメスクルス(Lichtervelde):20位
2021年 JCL第9戦 大田原ロードレース 22位
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