ここ10年の間に装着しやすい・手に取りやすい価格のものが増え、サイクリストにとってだいぶ身近な存在になってきたパワーメーター。しかしながらいざ取り付けてみて、その時走っているパワーを見ているだけに留まっている方も実は多いんじゃないかなと思います。
取り付けて走っているだけでもあなたのデータは残るので、現状の自分の能力に合わせてZwiftやStravaといったGarmin Connectとの各種連携サービスがトレーニングプランの提案やトレーニングメニューを組んでくれるため、頑張るモチベーションさえ用意できれば結構走力は向上するのですが、せっかくであれば画面に映し出されていることが何を表しているのか知れた方が自分の成長をより楽しく感じるのではないでしょうか。
この記事では主にGarmin のGPSサイコン、心拍計、パワーメーターを組み合わせてどんなことができるのかを主にトレーニング目線でご紹介していきたいと思います!
*トレーニング目線ではなく、もっとゆるく使う上でのメリットを知りたい人は以下の記事もどうぞ!
目次
・パワーメーターを買う最大のメリットはパワーデータが揃うこと!
何を当たり前なことを言っているんだ、なんて思わないでください。ブログのページをそっと閉じないで!
でも実際、そうなのです。おそらく多くの方は最初にGPSサイコンを買ってから次のステップアップにパワーメーターを買われることがほとんどだと思います。そこでの明確な違いはいつもの走行ログにパワーの情報が付加されているかどうかの違いなのです。このパワーデータが日々のライドを行う毎に積み重なっていき、あなたの現在のパフォーマンスとその時々のライドでどれだけ頑張っていたかを明らかにしてくれます。
ではパワーデータがあると具体的にはどんな良いことがあるのでしょう。パワートレーニングにおける独特な用語の解説とともに紐解いていきましょう。
・自分のステータスがわかる!
パワーデータを用いると自分のおおよその走行能力が分かってきます。自分の走行能力を測る大まかな指標は次の2つです。
FTP (Functional Threshold Power)
本格的そうな人たちがいつも気にしているアレです。具体的には一時間出力し続けられ、それ以上は出力できないパワーです。
特にロードバイクといった持久力を問われる傾向の強い競技において、その人の出せる持久的なパワーの指標とされます。
パワーウェイトレシオ
この数値は体重1㎏あたりどの程度のパワーを捻出しているかの指標です。その時に出しているパワーを体重で割ると計算できます。
例えば体重60㎏の人が300w(ワット)で5分で登れる峠を走った場合、その人はその峠を5倍で走った(300w/60㎏=5)などと言います。
このスポーツに慣れた人たちはよく上記のFTPのパワーウェイトレシオを算出して、その人のサイクリストの総合的なフィジカルの強さと捉えることが多いです。同じFTPであっても1㎏毎の体重で出しているパワーが高い方が特に登坂などでは速く走れるからです。例としては;
旦那さんの体重70㎏でFTPが200w : パワーウェイトレシオは 200w/70㎏ = 2.85 w/㎏
奥さんの体重50㎏でFTPが200w: パワーウェイトレシオは200w/50㎏ = 4.00w/㎏
この場合、夫婦でサイクリングに行ったら奥さんがぶっちぎりで速い場面がほとんどでしょう!
以上のように、FTPとパワーウェイトレシオ、パワーメーターを用いてこの2つの指標を見てみると、あなたのおおよそのサイクリングにおけるフィジカルの強さが分かります。EDGEサイクルコンピューターとパワーメータを連携して走行ログを計測すれば、蓄積されたパワーデータからGarminが自動でこの数値を算出してくれますので、RPGゲームなんかのレベルのような感覚で見てみると楽しいかもしれません!(下がるとテンションも下がりますが…)
クリティカルパワー
ただ、持久的な能力が低くても特定の時間は特に高いパワーを出せるなどといった得意不得意が当然サイクリスト間ではあります。先ほどの夫婦の例でいえば、旦那さんはFTPこそ奥さんのレシオよりだいぶ低いものの、3分間であればウルトラマンのごとくハイパワーを出せるとします。奥さんの3分パワーが240w/50㎏=4.8倍の時、旦那さんの3分パワーが350w/70㎏=5倍であれば、3分以内の短い登坂であれば勝負できるはずです。
この得意不得意を見ることができるのが、クリティカルパワー(パワーカーブ)です。
パワーカーブを見比べることで、あなたがどういった領域が得意で逆にどういった部分が弱いのかを明らかにすることができます。RPGゲームでのステータスの割り振りがまさにこれです。
もし練習仲間で同程度のFTPと体重の人がいたら見比べてみるのも面白いかもしれません。体重や基礎的な走力の部分以外での違いを知ることで、いつもの練習コースの特定の区間で全く勝てなかった謎が分かったりする…かもしれません。
・自分がどれだけ頑張ったかわかる!
ここまでは現在の自分がどれだけ走れるのかを知るための指標のご紹介でした。ここからはあなたがどれだけの練習を積めているか、つまり経験値(!)を見ることもパワーメーターを導入すれば見れちゃいます!
TSS (Training Stress Score)
そのライドでのパワーを基に運動時間を反映して、運動で身体にかかった負荷を数値化したものです。
あなたのFTPを前提に計算されているスコアですので、あなたの走力を考慮した点数が返ってきます。つまりあなたのライドパートナーのほうがFTPが高い場合、同じライドをしているのであればライドパートナーのTSSは低くなります。純粋に現在の肉体の能力に対してかかった負荷を可視化してくれる、ということです。
NP (Normalized Power、インターバルなどの強度変化を反映した出力平均パワー)とIF(IntensityFactor、NPをFTPで割ったそのライドの強度係数)を求めてトレーニング時間を掛け合わせ計算しますが、このあたりは難しいので割愛します。大丈夫、このあたりもGarminConnectで自動計算されますので!
TSSは1時間FTPで走り続けた際のスコアが100とされています。(実際に1時間きっちりFTPで走れるようならその人のFTPは本当はもっと高い可能性が高いですが…)また、個人差はあれど概ねTSS150であれば1日で回復できる範囲と言われており、 この範囲内でのトレーニングであれば連日しても問題はないようです。
筆者はTSS150もあったら翌日は疲れを感じていますが!
このTSSを用いることによって、その日自分がどれだけ頑張ったかを可視化できるだけでなく、疲労・休息の管理にも使えます。例えば前日にTSS300を稼ぐようなトレーニングを行ったのであればその日は疲れていることは間違いないので、休息に充てたり、乗っても軽めのアクティブレストにするなどといった判断ができます。
CTL(Chronic Training Load)
CTLとは前述のTSSを基に過去42日間のトレーニング負荷を、直近のトレーニングほど重視して割り出した平均です。いかにコンスタントに質の高いトレーニングができているかを見ることができます。ここの計算はさらに細かいので割愛します!
この項目については残念ながら現在Garmin Connect では対応していないため、確認するためにはSTRAVAやTraining PEAKSといった課金アプリが必要になります。日本のサイクリストになじみが深いのはSTRAVAかと思います。
一般的にある程度競技として自転車に乗る人は50-60、大会で上位に入るハイアマチュアは100近く、このCTLがあるといわれています。ただしトレーニングと疲労の関係には個人差もあり、やみくもにこの数字を追い求めればいいというものでもありません。基本的には高いTSSを6週にわたり続けていくと上昇しますが、自分の能力を超えてやりすぎるとオーバートレーニングになってしまいます。一週間のうちにCTLを5以上上昇させない方が良いという説もあります。
TSB (Training Stress Balance)
TSBはずばり、疲労の度合です。計算するにはその日のCTLからCTLの7日間版の“ATL”を引くことで計算できます。(ATLについては割愛します!)
これも現在のGarmin Connect では対応していないので、確認するにはやはりSTRAVAやTraining Peaksといった課金サービスが必要になってきます。このTSBが負の数である状態、つまりCTLをATLが上回っている状態だと、体が疲れていると考えられます。この状態が長く続くと多くの場合はオーバートレーニングに陥ります。
CTLやTSBの項目はありませんが、このあたりのパフォーマンスと疲労の関係についてはGarmin Connectアプリではトレーニングステータスという項目で表現しています。Stravaなどを使わないのであればこちらを参考にするのもいいのではないでしょうか!
・Garminパワーメーターを使うべきメリットって?
だいぶ情報量が多く、ここまで読むのも疲れたのではないでしょうか…。お疲れ様です、あともうちょっとお付き合い下さい!
ここまでご紹介した内容はあくまでパワーメーターがあると見れる、わかるコトです。パワーメーターを利用すればこれらの機能は使うことができる、別にGarmin RALLYでなくともいいのです…。
ですが、Garmin EDGEと連携してパワーメーターを運用するうえでは、Garmin パワーメーターを積極的に使うべきメリットがもちろんあります。
サイクリングダイナミクスの活用
Garmin EDGEとGarmin パワーメーターを連携させて使いたい最大の理由がこのサイクリングダイナミクスの活用です。
この機能を使うと、いままで感覚的な形でしか推し量ることのできなかった自分のペダリングの出来不出来が数値やデータで可視化されます。サイクリングは左右のペダルを交互に行う運動で、一般的にフォームや動きはシンメトリーである方が良いとされているので、このペダリングモニターでのパワーフェーズ(ペダリング円運動のうちどの位置でトルクがかかっているか)データとプラットフォームセンターオフセット(ぺダル面のどの位置でトルクをかけているか)データが参考になるでしょう。
実際のこの項目の使い方については下の過去記事をご参照ください。
通信接続の安定性
当たり前と言ってしまえばそれまでなのですが…。もちろん他社パワーメーターにGarmin EDGEデバイスと組み合わせるのに何の支障もありませんが、やはり同一メーカーから発売されている製品での接続が一番安定するのは言うまでもありません。デバイスの組み合わせによっては相性が悪く、仮にうまく接続しないといったようなことが起きたとしてもどちらのデバイスに問題があるのかの特定も難しく、メーカーが接続を保証するものでもありません。
やはり、揃えておいたほうがなにかと安心です。(メーカーブログだから書いてるんじゃないですよ!)
ボタン電池(!)
これは組み合わせというよりはGarmin RALLYのハード面の話なのですが… Garmin RALLYはボタン電池(LR44/SR44(×4) or CR1/3N(×2))を使用します。
なんでいまどきリチウムイオン電池でUSB充電にしないんだよ、ばか!って思ったそこのあなた!筆者もそう思ってました! でもこの仕様、ちゃんとメリットあるんです。
皆さんはサイクリング用品に限らず、生活の身の回りにある電化製品で経年による電池容量の低下に悩まされたことはないでしょうか。ノートパソコンやスマートフォンなんかが特に身近な例ですよね。電池の容量が少なくなって、ストレスを感じるようになったから買い替えた、なんて方が多いと思います。ふと考えたとき、そういえば何で電池を自分で入れ替えたりできないんだろうと思われませんでしょうか。一部製品によっては、電池の入れ替えをサービスとしている業者があるとは言え。
実はリチウムイオン蓄電池は体積エネルギー密度が高く輸送時の衝撃で発火したりする危険性があるため、電池自体は電気用品安全法の規制対象です。リチウムイオン電池をあらかじめ組み込まれている製品はこの規制対象にあたらないのですが、そのためには個人が取り外しできたりするような構造ではNGなのです。
なので世の中の多くの電化製品は電池が経年で弱ってきたら買い替えざるを得なくなりますが、そこでGarmin RALLYの電池形式が活きてきます。電池を入れ替えるという手間はありますが、年数がたっても常に最大120時間稼働のパフォーマンスを保てるのはこの仕様のメリットではないでしょうか。いざというときはコンビニでも電池調達できますしね!
ロードバイク趣味を嗜み始めるとどこかで必ず通りがかるであろうパワーの世界。特に日々の成果を実感することに喜びを見出すタイプの皆さんならハマるコト請け合いです!あまり難しそうと構えずに、一度飛び込んでみてはいかがでしょうか!
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