目次
「パワメって一部のハァハァ頑張ってる人のためのものでしょ?」
「そんな速く走りたいわけでもないし、パワーメーターなんて要らないかな…。」
「自分が出してるパワーなんて知ってどうするワケ?」
ここ10年の間に装着しやすい・手に取りやすい価格のものが増え、サイクリストにとってだいぶ身近な存在になってきたパワーメーターですが、まだまだ競技や純粋にスポーツとして自転車に乗っている人のものというイメージが強いのではないかな、と思います。上記のように考えている人も多いのではないでしょうか。
実際、パワーメーターの出力計測は競技ライダーのトレーニングのための指標や、ブルべ等長距離ライド時のペーシングに使われることが多いです。ですが、だからと言って「高強度や長距離は別に走らないよ」という方にとって=パワーメーターは要らないもの、ということではないはず…!
筆者は世の中にいるサイクリストのうちその日に稼いだTSS(トレーニング量を測る指標。Training Stress Score )を気にしだしたり、2~300㎞超走ってコースト・トゥ・コーストを目指したりするような人たちは1割にも満たないと考えています。SNSだとどうしてもそういう人ほど派手で目立つのは間違いありませんが、多くの自転車を楽しむ多数派の私たちはそうではないんです。昔はそうだった、という方はいるかもですが。
そんな多数派の私たちにとってパワーメーターはほんとうに要らない子なんでしょうか?食わず嫌いならもったいない!STIレバーやクリップレスペダルだって最初はレーサーのためのものだったはずです。そんな考えから、この投稿ではパワーメーターが週末ホビーとして自転車を楽しむ我々にどんな恩恵をもたらしてくれるのか考察してみることにしました。
そもそも「パワー」ってなに?なにが良いの?
そもそもパワーメーターで計れるパワーって何だろう。まずはここから紐解かなければなりません。この疑問への答えとしてうってつけな参考文献が手元にありました。
Garmin RALLY パワーメーターペダルを購入するとついてくるこのブックレットですが、元マウンテンバイクXC選手で最近はトライアスリートとしてもお馴染みな竹谷賢二さんがパワートレーニングについてレクチャーした内容を再録したものです。パワーとは何かという内容からそれを活用したトレーニング方法、Garminガジェットの使い方までを記載しています。
ブックレットによると、パワーとは物を動かすための「力」と動かす「スピード」を掛け合わせた仕事率のこと、とあります。これをベンチプレスに例えると;
100㎏を10秒で2回動かす=200㎏の仕事量(パワー)
20㎏を10秒で10回動かす=200㎏の仕事量(パワー)
この例では10秒間のうちに出しているパワーは同じといえます。瞬間的にそこで発生させている力だけではなく、速さも掛け合わせた指標ということですね。自転車ではw(ワット)と表されます。
では、このパワーという指標は具体的に何が優れているのでしょう。
自転車で自分がどのくらい走れているのか計るための指標としてはほかにスピードと心拍数があります。スピードは低価格のサイコンやスマートフォンのGPSを使ったアプリで気軽に計測できるので多くの人が経験済みでしょう。ただこのスピードですが、やっかいなのが風向きや道の勾配、路面のコンディションといった外的要因による変化の幅が大きいです。往路は快調にとばしていたのに復路で一気にペースダウン、自分の調子が悪いのかと思ったら実は微妙に1-2%くらいの上り勾配だった、なんてあるあるです。
もう一方の心拍数は自分の体に対しての負担を視覚するための指標です。別途心拍計が必要なのでスピードよりは幾分ハードルが上がるでしょうか。最近はスマートウォッチなどでも計れるのでそちらで見ている人もいるかもしれませんね。心拍数は自分の体にどれだけ負荷がかかっているのかモニターするのには有用ですが、「その時の自分」しか確認することができません。その日のコンディションで遅いペースでも息が上がりやすかったりなど必ずしも一定な計測ができるものではありませんし、個人差があるため他の人との比較には使えません。
その点、パワーは周りの外的要因に左右されず向かい風の20㎞/hであっても追い風の40㎞/hであっても同じ200wが計測されます。他の人と比較する場合も自転車を進ませるための物理的な仕事量を見るわけですから、計測機器による若干の差異はあれど、この坂を〇〇さんは何wで登っているなどといった比較が可能です。
*よりパワートレーニングに関して詳細を知りたい方は下記をどうぞ!
トレーニング目的じゃないパワーの活用って?
ではトレーニング目的ではないパワーの活用ってどんなことができるでしょう?サイクリング、ポタリングでパワーが活躍する場面って?
突然ですが、皆様、サイクリングデートってしたことありますか?筆者はしたことがないです。なのでここからは想像です…!
男女でサイクリングをすると、多くの場合はフィジカル差があるため走力に開きがあるのが通常一般的だと思います。(もちろん女性側がつよつよサイクリストで立場が逆転するケースも存じておりますので、あくまで一般論としてご容赦ください…。)例えば「今日は平地ばっかり、25㎞/hくらいで走るよー」としたとします。パワーメーターのない彼氏様・旦那様はおそらくサイコンでスピードを見ながら25㎞/hを先頭で維持することでしょう。しかし今日走る道全部が全部、真っ平なんてことあり得るのでしょうか。勾配の変化でパートナーはついて行けずはるか彼方。ちぎり去ってしまったあなたは一週間口を聞いてもらえないどころか、破局の危機を迎えるでしょう。
もしくは「今日は有酸素運動!心拍120より上げないから大丈夫!」と言ったとします。なんであなたの心拍120が彼女の心拍120だと思ったのでしょうか。愚かな…。心拍120のテンポペースで走るあなたの後ろで後ろの彼女様・奥様はVo2MAX!息も絶え絶え、ハァハァしています。最終的に力尽きた彼女たちは深い恨みをあなたに抱き、一週間口を聞いてもらえないどころか、破局の危機を迎えるでしょう。
サイクリングデート、リスクしかねぇな…。怖…。
そんな感想を持ったあなたも、パワーメーターを手に入れれば状況は一変します。例えば彼女様・奥様の走力が大体100~120wくらいで走れるとわかっていたとします。彼氏様・旦那様はその前提で先頭を走りながらエスコートすればよいのです。峠に行くことがあれば同じパワーだと体重の軽い彼女たちのほうが速いので、同じパワーウェイトレシオで走れば一緒に走れます。(パワーウェイトレシオとは体重1㎏あたりどの程度のパワーが出ているかの割合のことです。詳しくは下記へGo!)
これであればパートナーと最後まで足並みを揃えてサイクリングすることができ、帰ってきてから疲れたねー、気持ちよかったねーと会話に華を咲かせることができるでしょう。走っている最中、立ち寄った場所について感想を言い合ったり、買ったお土産を楽しむとても幸せな時間を過ごせるはずです。
パワーメーターでサイクリングデート、大成功!です!
ガチンコライダーというわけではない我々にとってもパワーメーターは有用である、ということが改めてわかりました。同行者、他者との比較に共通で使える尺度としてのパワーは、今後サイクリングを趣味とする人にとってますます一般的なものになっていくことでしょう。この機会にまだパワーメーター未導入であればおひとつ検討してみてはいかがでしょうか。もしかしたらあなたにとって自転車の世界の新しい扉がまた一つ開くかもしれません。
後日追記: 2022年1月、ガーミンジャパン株式会社様より満を持してパワーメーターRALLY XCが発売されました!
今までのガーミンペダル型パワーメーターとの違いはただ一点のみ、ビンディングの方式が「SPD」であること。最大の特徴にして強みです。
そうは言ったってゆるポタしたいときにSPD-SLじゃああんまり歩けないし、結局使えないよなぁ…と思っていた方もこれで解決です。
3ホールクリート対応しかなかったことがパワーメーター未導入の理由だった方は、この機会に検討されてみてはいかがでしょうか…!