2021年、「TOKYOのビッグレース」MTB男子クロスカントリーでイギリス代表のトム・ピドコック選手が金メダルを獲得しました。
21歳での金メダル獲得は、同レースMTBクロスカントリーの記録の中では最年少となります。
突然のアクシデント
MTBワールドカップで発揮した優れたパフォーマンスのおかげで、ピドコックはイギリス人男性ライダーとして唯一の「TOKYOのビッグレース」への出場権を獲得しました。
そこから先は レジェのワールドカップまでMTBレースから離れ、ツアー・オブ・スイスでロードレースに参加する予定でした。
しかし、彼は災難に見舞われてしまったのです。5月の最終日、練習走行中に車にはねられ、ピドコックは鎖骨を5か所も骨折。治療するには手術が必要で、この時点でビッグレースは56日後に迫っていました。
望みが絶たれたといっても過言ではない深刻な状況でしたが、彼は回復に専念し、6日後には実走ではなく屋内トレーナーを使って自転車に乗る事ができました。
彼は予定通りレジェのワールドカップには出場しましたが、賢明にもリタイアし、代わりに「本当に現実感の無い」TOKYOの準備という「ミッション・インポッシブル」に集中しました。
不安、そしてゆるぎない自信
そして迎えた「TOKYOのビッグレース」。
会場となった伊豆は、もともと難易度の高い地形に、テクニカルなロックセクションやクロスカントリーの域を超えたチャレンジングな縦の動きが盛り込まれた容赦ない難コースです。
基本的に足を休められる場所や遅れをリカバリーできる場所はほとんど無く、アタックを仕掛けるための場所はさらに少ないのです。
このレースに出場するにあたって、まだ若く、経験の浅いピドコックは自問自答を繰り返していました。
鎖骨は大丈夫だろうか?体は大丈夫だけど事故以来、フル出場していないのでフォームはどうだろうか?
しかし、ひとつだけ彼が疑わなかったのは、SRサンツアーのTACT E-サスペンションです。
電子制御式のフォークとリアショックであるTACT E-サスペンションは、ライダーの操作を必要とせずに、ワイドオープンからフルロックまで、その間のすべての機能を提供します。
ピドコックは、他のプラットフォームと比較してテストした上で、こちらを選択しました。
伝統的なサスペンション・プラットフォームと比較して、最先端のデザインであることは言うまでもありません。
レースの日、回復したピドコックはどこかで見たような…4列目からのスタートとなり、劣勢なのは間違いない…スタートラインに並んでいました。そう、あのアルプシュタッドのレースのような状況!
参考:ポディウム・ラッシュ ~トム・ピドコック MTBワールドカップへの挑戦
しかし、ピドコックの自信はゆるぎないものでした。
日本特有の湿度が高く蒸し暑い天候も、彼を悩ませるほどではなかったのです。。
彼はこのレースまでの数週間、毎回のトレーニングの最後に「ヒートトレーニング」を行っていました。
自分が相当なハードワークをこなしていたことは分かっていたし、体力もある。
そして、この気候は相当不快だけど、結局、どの選手にとっても同じ条件ではある。
金メダル獲得へ!
スタートの号砲が鳴り、ピドコックのスタートダッシュも炸裂。
スタートラップで前の選手を一気に抜き去り、1周目完了時には、前回チャンピオンのニノ・シュルターと、ワールドカップ総合優勝のマティアス・フルッキガーのすぐ近くまで迫りました。
その後の2ラップは、2位と5位の間を行き来していました。
そして、彼は次の周回で激しいアタックをかけたのです。
周回を重ねても、決して油断ができません。
テクニカルなロックセクションがあり、多くの登りはドライで埃っぽく、スリップダウンしやすくなっています。少しでもミスをすると取返しがつきません。
アタックのタイミングを選ぶことは、厳しいコースの中でチャンスを作ること。3周目の序盤、ピドコックはまさにそれを実践しました。
残りの周回では、シュルター、フルッキガーをリードしました。その後も彼らをリードしたまま、寄せ付けることなく走りきったのです。
4周目には、彼らの力を見極めるために一旦停車した後、即座にアタックに転じました。シュルター、フルッキガーの2人は追いつこうとして失敗するという大混乱に陥ってしまいました。
5周目にはフルッキガーが転倒してしまいました。その後、ピドコックは銀メダルを獲得したフルッキガーに一歩も譲らず、テクニカルセクションを上手くクリアし、登りではしっかりとした姿勢を保ち、フラットな部分ではすべてのコースを走り抜け、経験の浅さを感じさせない走りで、勝利をゆるぎないものにしました。
そしてついに驚くべきサクセスストーリーは最高の結末を迎えました!ピドコック選手、金メダルを獲得!(英国初のMTB金メダル)
このレースは大番狂わせになり、フルッキガーが銀メダル、スペインのデビッド・セラーノが銅メダルを獲得しました。
彼自身の言葉を借りれば、「僕がこのビッグレースの代表になったことは、とてもクレイジーで不思議な事だね」
まさに特別な存在です。