「もう30回転ケイデンスを上げろ!!」
劇場での公開ももう終わったころかと思いますが、非常に制作側の熱意を感じる今年の邦画スポーツ映画個人的最高峰の面白さでした。お薦めです。
主人公たちが黄色いジャージのあの漫画での最初期の名言ですが、実際には登坂の最中にケイデンスを30上げて加速するなんてファンタジーもいいところですよね。ただ、やはり速く走りたいローディの皆様にとっては「あと少しでもケイデンスが上げられれば、あとちょっとでもワット数を上げられれば前にいるライバルを追い落とせるのに…」と考えずにはいられないのではないでしょうか。その「あと少し」を追い求めて、日夜、私たちはバイクの上でぜぇはぁ言ってVO2MaxとFTPを気にすることでしょう。
でも、アレ、つらいですよね…?
なんとかその辛さから逃れながら自分の希望を叶えたいと願い、機材投資に精を出しはじめるサイクリストがあなたのまわりにも多くいらっしゃるかと思います。
大抵はバイク自体の軽量化やベアリングなどによる駆動系の抵抗低減などが主かと思います。ただ、なかなかライダー自身の捻出する出力自体を機材で高めてしまおう等というのは聞いたことがない、むしろ世迷言であるとすら思われるのではないでしょうか。
あります、そんな魔法のようなプロダクト。
すべてはライダーのパフォーマンスを高めるため。パワー、快適性、そしてライドインフォメーション。
サイクリングにとって最重要なこの3つの要素を創造する独創的なプロダクトを送り出すイタリア、Skopre社より「ZEN System クリート」のご紹介です。
まずはプロダクトのオーバービューから。パッケージはなかなかシックで「CADENCE/POWER BOOSTER」の表記が期待を高めます。
上部のカバーを開けてみると、本体である「ZEN System」クリートが顔を出します。取り付けに必要なハードウェア類は下部の箱に収納されています。
内容物としては通常の3ホール・クリートと変わりありませんね。取り付け用のスペーサーとボルトが左右3つづつ付属します。
この「ZEN SYSTEM」クリートですが、Skopre本社では使用によって約5-7rpmほどのケイデンスアップ、上りでのペダリングパワー約4%超の向上が見込めるとしています。仕組みとしては通常クリートであれば踏み抜いたときに下死点で下へ向かうパワーを入力ベクトルを変えることでペダリングストロークを改善するというものです。
効果としては既に発売中である「ZEN Slip」クリートシムと同様のもので、そのLook Keoクリート版となります。従って、SHIMANOペダルユーザーやTIMEペダルユーザーが同じ機能を求める場合はこちらのZEN Slipクリートシムを使うことになります。
ZENSlipクリートシムはこちら : https://www.riteway-jp.com/pa/576900.html
本国のMauro Testa博士による商品テストではZENスリップ使用時は非使用時と比べケイデンス80を維持した状態での11分のライダー平均パワーが5%向上し、ペダル下死点でのトルクが20%向上しているという結果が出ています。
ここまでの説明ですと、効果の程についてはやはり不可思議に思われる方が多数かと思います。
なんとなく理屈は判るけど、本当にそんなにうまくいくものなの…?というのも尤もです。
やはりここは自分の身をもってして効果を体感してみるしかないでしょう…!
計測は皆さまお馴染みのGarmin Vector3パワーメーター。
比較対象は現在の私のFTP 4.12(247W)です。
ZENSystemクリートを取り付けます。ご覧の通りボリューム感があり、マッシブな印象です。
クリートは通常のクリートよりも厚みがあるため元々の自分のポジションよりサドルを7㎜ほど上げる必要があります。詳細については同封説明書にクランク長変更時の場合も含めて記載があります。
GarminのFTP計測でぜぇはぁいいます。自分との闘いの始まりです。苦しんだ過程は恥ずかしいので省略させて頂きます。
そして結果がこちら!
上がってしまいました…!(驚きを隠せない)
およそ2.5%と公式の出している数値ほどではないですが、確かにパワーの向上を確認できました。
使ってみた感想としましてはおそらくケイデンスが低く、ペダリングが踏み足主体(引き足が弱い)の人のほうが効果を感じやすいと思います。これを取り付けて純粋にサイクリスト本人のパワーが上がるというよりは、ペダリング時のパワーベクトルを変えることによるペダリング矯正クリートと考えるのが正しいでしょう。
現実世界での実走時は特にケイデンスが低くなるヒルクライムの場面で効果を発揮します。
この商品のデメリットとしてはクリートの厚みによるポジション変更の必要とペダルへのクリップイン時及びペダリング時のダイレクト感が損なわれるという点でしょうか。前者は自身のポジションを煮詰めることでZenクリートを付けた上でのポジションを最適化できるかと思います。後者はライダー自身が鈍感力を鍛えるしかありませんね(笑)
ZENクリートは定価¥5,180です。この類の機材投資の中では比較的手の出しやすい部類ではないかと思います。峠の頂上でパワーとケイデンスをブーストさせる秘密兵器として導入してみては如何でしょうか。