こんにちは、自転車通勤担当のサキです。
ディスクロードが人気になるにつれて、スルーアクスルという単語が良く出るようになりましたね。
スルーアクスルと呼ばれるハブには様々な規格があるので、私の通勤ディスクブレーキロードバイクのFELT VR3を使いながら整理してご紹介します。
これまで、メカニカルディスクブレーキ charge 「plug」→105油圧ディスクのグラベルロード GT「GRADE」→ULTEGRA 油圧ディスクの マルチロード FELT「VR」と乗り継いで来ました。
目次
スルーアクスルとクイックリリースの違い
まずはスルーアクスルとクイックリリースの違いについて。
スルーアクスルのアクスル(AXLE)は車軸という意味です。
従来のロードバイクのアクスルは下の写真のようなクイックリリースと呼ばれる固定方法でした。
フレームの車輪が収まる先端部分にはエンドと呼ばれるコの字型のスペースがあり、そこの車輪の軸をはめ込むのがクイックリリースです。
レバーを開閉するだけで簡単にホイールの脱着ができるので、キャリパーブレーキを採用しているロードバイクディスクブレーキモデルは ほぼ全てこのクイックリリースが使われていました。
スルーアクスルに似ている物で、下のようなクイックレバーが無いスキュワータイプの軸もあります。
レバーが無い代わりにヘキサレンチでホイールを固定します。
固定方法はスルーアクスルと同じですが、ホイールとフレームを支えているのはハブ内部の軸になりますので、クイックリリースの仲間になります。
スルーアクスルのメリット
スルーアクスルとクイックリリースを比較すると以下の違いがあります。
スルーアクスルの強み
・ディスクブレーキを使っても車輪がずれない
・剛性が高い
・車輪を平行にセットしやすい
クイックリリースの強み
・脱着が簡単
・軽量
フロントのズレ防止
特にディスクロードが増えたと同時にスルーアクスルが拡大した背景には、ストッピングパワーの強い油圧式ディスクブレーキをクイックリリースハブに使った時のホイールのずれを防止する効果があります。
シマノ製のクイックリリースを使っていて適切に固定されていれば、まずずれることはありませんが、フロントフォークのエンド形状はディスクブレーキが出現する前に規格化されています。
そのため、上の写真のように制動した時にホイールがエンドから外れる方向に力がかかってしまいます。
そのため、油圧ディスク装備のロードバイクではオープンエンドよりもスルーアクスルタイプが積極的に採用されます。
メカニカルディスクの場合はそれほど瞬間的な制動力は発生しづらいので、まだ価格の安いクイックリリースタイプの方が主流です。
また、リアのエンドは制動時にずれない向きになっているので、問題にはなりません。
強めの固定トルク
さらにクイックリリースよりも強い22Nm前後のトルクでスルーアクスルは締め付けるので、フレームとホイールのよじれが発生しにくいです。
車輪固定が簡単
スルーアクスルは難しいというイメージがありますが、実はそうではありません。
確かにクイックリリースよりは脱着に時間はかかりますが誰でも簡単に正しい位置に固定できます。
ホイールが常にフレームの正しい位置に入るので、初心者でもホイール組み付けのセットアップがしやすいです。
クイックリリースはフレームのセンターにホイールを固定するのが初心者には意外と難しいので、特にクリアランスの少ないディスクブレーキの場合は誰でも正確な位置にホイールを固定できるメリットが大きいです。
オーバーロックナット(OLD)の拡大メリット
スルーアクスルは車軸のタイプが変わっただけでなく、ハブが入るスペースとなる、オーバーロックナット寸法も変わります。
MTBではフロントも変わっていますが、ディスクロードの場合はリアのみ135mmから142mmに拡大されるのが一般的です。
ディスクブレーキになると、ハブボディがスポークを通してタイヤを引っ張って(突っ張って)制動力を生み出すので、リムブレーキに比べてスポークに大きな負担がかかります。
リアはフリーボディ―があるので、ホイールをオフセットさせて組んでいるため、その影響が特に顕著です。
そのため、車軸の幅であるオーバーロックナット寸法を拡大してブレーキに対するスポークの強度を保ちやすくしています。
スルーアクスル規格 ねじ径とOLD
ロードバイクのスルーアクスルの基本の規格はネジ太さとハブが入る幅です。
アクスルを見ると、ほぼ間違いなく上記写真のように規格がシャフトに記載されています。
リアスルーアクスル
ねじ径 | オーバーロックナット寸法 |
12mm | 135mm |
12mm | 142mm |
12mm | 148mm*主にMTB用 |
フロントスルーアクスル
ねじ径 | オーバーロックナット寸法 |
12mm | 100mm |
15mm | 100mm |
現在のトレンド
ディスクロードでは以下の規格に集約されつつあります。
各ホイールメーカーも対応してきているので、以下の規格のフレームを買っておくのがおすすめです。
フロント 12mm×100mm
リア 12mm×142mm
完成車ブランド スルーアクスル規格
F12mm×100mm/R12mm×142mmチーム
ジャイアント TCR DISC
トレックドマーネSLR
トレック ドマーネSL
スペシャライズド ベンジ
スコット アディクトディスク
BMC ロードマシーン
キャノンデール シナプス
FELT VRシリーズ
上記以外のスルーアクスルタイプ
キャノンデール スーパーシックスEVO
FUJI ジャリ
→フロント12mm×100mm/リア9×135mm(QR)
GT グレード カーボン
→フロント15mm×100mm/リア9×135mm(QR)
大部分がフロント12mm×100mm、リア12mm×142mmに集約されているようです。
フロントのみスルーアクスルという車種もそれなりに存在します。
*2017年8月調べ。
マイナーチェンジなどで変わる可能性もありますので、詳しくは各メーカーへご確認ください。トレンドを見て頂くための参考として掲載しています。
幅に加えてスレッドピッチも合わせる必要がありますので、そちらはページ下部で説明しています。
MTBのブースト規格との合流の可能性
MTBはブースト規格が盛り上がっていて、以下の規格に集約されつつあります。
MTBフロント 15mm×110mm *ロード規格 12mm×100mm
MTBリア 12mm×148mm *ロード規格 12mm×142mm
ロードバイクのメジャーになりつつあるスルーアクスル規格と比べると、フロントは幅が10mm広く、リアも6mm広くなっています。
幅が広い方が剛性が上がって良いように思えますが、ロードのOLDが狭いのには理由があります。
まずMTBのブーストは27.5×3.0のような太いタイヤをスペックするために、ワイド化されていますが、ロードでそのようなワイドタイヤをスペックすることはありません。
さらにリア変速性能との兼ね合いがあり、ハブが広くなるとカセットスプロケットがバイクの中心が離れてしまう=フロントチェーンリングからずれるため、変速に影響が出てきます。
MTBはフロントシングルがトレンドなので、チェーンリング位置に自由度がありますが、フロントダブルのディスクロードバイクの場合はそうもいきません。
さらにロードバイクはMTBよりも短いチェーンステーなので、よりシマノの推奨設計において、正しいチェーンラインを出すのがシビアです。
仮に148mmに広げると、さらに変速に無理が出るので、その方向は無いかと思います。
グラベル系ディスロードに限れば、トレンドがフロントシングルへ向かっているので、今後の動向によっては27.5ホイール+ワイドタイヤでリア148mmというMTBに近いモデルも出るかもしれません。
フロントは15×110mmという可能性は重量面のデメリットはありますが、変速の制約が無いので技術的なハードルは低いです。
ただ、これだけディスクロードでフロント100mmのスペックがメジャーになってきた今は、110mmの幅をロードスペックに持って来るのは難しいと思います。
ホイールブランドのスルーアクスル規格
基本コンバーターで互換性あり
例えばアレックスRXD3の場合は、5種類のコンバーターが付属します。
フロント⇒9×100、12×100、15×100
リア⇒10×135、12×142
上記コンバーターが付属するので、ほぼ全てのロードバイクのスルーアクスル規格に対応しています。
52000円で1550gと驚異の軽さなので、ディスクロードのグレードアップにおすすめです。
クランクブラザーズのシクロクロス/グラベルロード用ホイールのZINC(ジンク)は以下の4種類が標準で付属。
フロント10×100、15×100
リア 10×135、12×142
フロント12×100mmとリア12×135mmは別売りのコンバーターで対応できます。
ホイールはシャフトサイズだけ見ればOK
上記のようにコンバーターがあるので、スルーアクスルロードバイクのホイール選びは、軸径とOLDをチェックすればOKです。
12mm×142mmのスルーアクスルフレームであれば、その規格に対応しているホイールであればシャフトの規格に関わらず、手持ちのシャフトがそのまま使えます。
逆に言うと、ホイールにスルーアクスルは付属しません。
とはいえ、各社ハブの構造は微妙に異なるので、互換性が心配な場合はご自身のスルーアクスルの規格を確認して、ショップ、ホイールメーカーに相談しましょう。
スルーアクスルのカスタム
最後にスルーアクスルを別の物に交換する場合についてです。
実はこれが一番ハードルが高く、スルーアクスルの規格は軸径と幅に加えて、ネジの規格もあります。
先ほどのホイール交換で紹介したように、ネジの規格はフレーム側に依存するので、ホイールを交換、グレードアップする場合は軸径とOLDを合わせておけば、そのまま手持ちのシャフトを使用することができます。
ネジを壊してしまったりした場合はフレーム、フォークメーカーからシャフトを買うのがまず間違いありません。
そのため、今までクイックリリースで流行していたシャフトのカラーカスタムや、軽量化がやりづらくなりました。
KCNCブランドでスルーアクスルのカスタムパーツを販売していますが、12mm×142mmだから使える!というわけではないのが難しい所です。
各ブランドのスペックシートを見ても、シャフトの詳細まで記載されていないことがほとんどです。
参考までに、試しに交換してみた私のFELT VRのスペックは以下です。
フロント 12mm×100mm ねじピッチ 1.5mm
リア 12mm×142mm ねじピッチ 12×1.0mm Syntace X-12規格
このスぺックだと、リアのスルーアクスルにはKCNCのKQR08 Syntace X-12用のスルーアクスルを組み付けることができました。
現在フロント側スルーアクスルはロード系に対応する物は弊社では取扱がありません。
スルーアクスルのネジ規格を見ていきましょう。
スルーアクスルスレッドピッチ一覧
一番重要なのはねじのピッチ=ネジ山の間隔です。
1mmピッチのねじの場合はネジ山の間隔が1mmという事です。
1mmスレッドピッチ SYNTACE X-12
1.5mmスレッドピッチ MAXLE(15mm)、DT SWISS(15mm)、
1.75mmスレッドピッチ MAXLE(20mm)
2mm スレッドピッチ MAXLE(20mm)
ロードバイク用スルーアクスルネジ規格(リア)
SYNTACE X-12
軸サイズ 12mm×142mm ねじピッチ12×1.0mm
ロックショックス マクスル MAXLE
シャフト径12mm×142mm ピッチ12×1.75mm
シマノ E-thuru
シャフト径12mm×142mm ねじピッチ12×1.5mm
DT SWISS
シャフト径12mm×142mm ねじピッチ 不明
ロードバイク用スルーアクスルのネジ規格(フロント)
Rockshox Maxle Stealth
ロード用12mm 1.5mmピッチ
Rockshox MAXLE
ロード用15mm 1.5mmピッチ
*MTB系の15mmスルーアクスルと同じ。
ロード用で調べた限り上記2つの規格しか出てきませんでしたが、ねじピッチに関しては情報が少ないので、純正品以外を購入する場合は念のため現物のねじピッチを調べた方が良いです。
MTB用ねじ規格(参考)
参考までに、MTB用だと以下のような種類があります。
実際は軸径20mmなどもあるので、もっとたくさん種類があります。
FOX 15mm×110mm 14×1.5mmピッチ
FOX 15mm×100mm 14×1.5mmピッチ
ロックショックス 15×100mm 15×1.5mmピッチ
ロックショックス 15×110mm 15×1.5mmピッチ
スルーアクスルロードの車載方法
スーリーのアウトライドにアダプターを使用してフォークダウンで固定する方法を以下リンクで紹介しています。
https://www.riteway-jp.com/itemblog/%e3%83%96%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%89-20258/2018/09/_adminrpj
スルーアクスルカスタムのまとめ
スルーアクスルのカスタムは軸径、軸長、スレッドピッチに加えて、全長とねじ切り部の長さもメーカーによって異なるので、慎重に同じ規格を探す必要があります。
以上ロードバイク、グラベルロード用スルーアクスル規格ガイドでした。
弊社取扱のFELTではディスクロードモデルはFR disc(レース向け)とVR disc(通勤/ツーリング向け)がございますので、ディスクブレーキ装備のロードバイクをお探しの方は是非ご検討下さい!