空気抵抗とは何か?

科学的に言うと、空気抵抗の式は以下のように求められます。CD=空気抵抗係数、p=流体(自転車の場合、流体は空気)の密度、V=流体に対する物体(自転車)の速度、A=物体の断面積、です。しかし、最も単純な言葉で言えば、空気抵抗とは、走行時に空気が前方運動量に及ぼす抵抗の大きさのことを表します。空気抵抗は、自動車から飛行機、さらには列車に至るまで、あらゆる業界のエンジニアにとって非常に複雑な課題です。例えば自動車が風を切って効率よく移動する(空気抵抗を小さくする)ことで、高速走行時の燃料消費量(自転車の場合は、サイクリストがペダルを踏む力)を少なくすることができます。

現代のロードサイクリング・エアロダイナミクスに対する理解

FELTエンジニアは、数年にわたるリサーチとサードパーティから得た膨大なデータをもとに、実際のライディングシーンにおいて、ロードサイクリスト(トライアスリートとは異なる)は、比較的ヨー角の少ない状態でほとんどの時間を過ごすことを発見しました(「ヨー角」については次項を参照)。つまり、ほとんどの場合、サイクリストに影響を与える最大の空気抵抗は、比較的真正面からの角度でぶつかるものなのです。この新しい認識は、近年までの業界全体の常識に反しますが、最近の製品開発サイクルにおいて、Feltだけでなく、複数の先進的なフレームメーカーによって同様の結論が導き出されています。このデータをもとに、FELTエンジニアはプロジェクト毎に、新しい翼断面形状とデザインの組み合わせを何百通りもバーチャルに作り出します。同時に、有限要素解析(FEA)ソフトウェアを用いて、それぞれの形状とそれに付随するフレームチューブの接合部の構造特性を評価し、特に剛性の出力予測に注意を払います。総じてこのプロセスは、自転車のスピードとライダーのパフォーマンスをシームレスに融合させることを目的としています。そして、風を切り、ライダーのパワーを余すところなく速度へ変換させるというバイクの性能を適切に評価するものです。

ヨーアングルとは?

「ヨー角」は次のように定義されています。ライダーの進行方向と実際に影響する風向き(「相対風向ベクトル」とも呼ばれ、ライダーの速度と周囲の風向きの組み合わせ)の間の角度のことです。上述の通り、最近の研究ではロードサイクリストはほとんどの時間を低いヨー角で走行することが分かっています。しかし、「低ヨー角」という言葉はまだ厳密に定義されておらず、フレームメーカーによって指し示すヨー角の範囲が異なる場合が多々ありました。そこでFELTでは、多くのサイクリストにも明確に提示できる「低ヨー角」の定義として、ヨー角の範囲を-10〜+10°と考えています。これはFELTでの研究と、第三者の独立研究機関の調査に基づいています。この情報は、私たちが新しい翼断面形状を開発するための基礎となり、まったく新しいARロードバイクの誕生につながりました。また、将来的なプロジェクトにおいても、同様に検討されることでしょう。