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エアロダイナミクスとは?力学の一分野で、空気の運動と、空気と相対的に運動する物体に作用する力を扱う。空気力学。 向かい風の日にバイクに乗ると、穏やかな日よりも多くの空気が顔に当たり、風と戦っているのがペダリングで体感できます。逆に、追い風で走っているときは、抵抗がないだけでなく、風に後押しされて前に進んでいるようにさえ感じられます。しかし、風が吹いていないときでも、周囲の空気の塊の中に飛び込んでいるわけですから、常に前進する力に抵抗が生まれていることになります。これが空気抵抗であり、スピードにとって最も大きな障害です。構造的に最も効率的なフレームと、とてつもなくパワフルな脚を持っていても、エアロが効いていなければスピードは出ません。

私たちのエンジニアはエアロダイナミクスのエキスパートであり、彼らの意識は、スピードを低下させるあらゆる障害を排除することに向けられています。空気抵抗を減らせば、エネルギー消費量を減らし、より速く走れるようになります。長い1日の終わりに、より多くの燃料を自身の内なるタンクに蓄え、他のライダーが失速している間にレースに勝つためのスプリントを開始することができるのです。

空気抵抗とは何か?

科学的に言うと、空気抵抗の式は以下のように求められます。CD=空気抵抗係数、p=流体(自転車の場合、流体は空気)の密度、V=流体に対する物体(自転車)の速度、A=物体の断面積、です。しかし、最も単純な言葉で言えば、空気抵抗とは、走行時に空気が前方運動量に及ぼす抵抗の大きさのことを表します。空気抵抗は、自動車から飛行機、さらには列車に至るまで、あらゆる業界のエンジニアにとって非常に複雑な課題です。例えば自動車が風を切って効率よく移動する(空気抵抗を小さくする)ことで、高速走行時の燃料消費量(自転車の場合は、サイクリストがペダルを踏む力)を少なくすることができます。

どのように空力効率を高めるか

自転車エンジニアがエアロダイナミクス開発を進めるためのツール、コンピュータープログラムは数多く存在します。しかし、どんなツールを用いて機材開発を進めているのかだけが注目されがちですが、どんなプロセスが実行されているかも同等に影響します。私たちのエンジニアがどのような道具を使っているかと同時に、より重要なこととして、どのようにして最速のバイクを設計しているのか、これがFELTのバイクが競合と比べ、一線を画している理由です。FELTでは、30年以上前に最初のバイクを設計して以来、常にエアロダイナミクスにこだわってきました。

数値流体力学(CFD)

CFDは「バーチャル風洞室」とも呼ばれ、空気抵抗の影響をデジタル空間でシミュレーションするコンピュータ・モデリング・ソフトウェアです。CFDソフトを使う一番のメリットは、その時間あたりに実行できる試行錯誤の数です。実際の風洞室の中ですべての時間を費やすよりも、長い目で見ればはるかに単一時間当たりにかかる負荷が低く、かつ効率的に多くの形状試行を繰り返すことができます。このコンピュータモデリングのメリットを活かし、FELTエンジニアは何千ものシミュレーションを行い、自転車のフレームやチューブの形状、部品のさまざまな組み合わせをテストすることができます。

CFDは他のブランドでもエアロ開発をしていれば用いられていますが、FELTでは自転車の走行を考慮した独自の計測メッシュを作成。さらにエアロダイナミクスが着目される前から長い時間を費やしてきた計測結果の蓄積により、FELTはこの分野のパイオニアとしての地位を確立しています。しかし、やはり実際の自転車を風洞室に入れることで得られる知見に勝るものはありません。だから、FELTでは今でも自転車の開発に風洞実験も活用しているのです。

風洞実験

「CFDでのシミュレーションが終わると、すべてのパーツを組付けた原寸大プロトタイプを制作し、風洞実験に持ち込みます。CFDによるデザインの結果が正しいかチェックし、クレイを使用して細部の修正を加え、パーツとの相性も確認し、バイクのトータルパフォーマンスをブラッシュアップさせるのです。乗り物の空力効率を調べるのに、風洞実験ほど適したツールはありません。そのため、主要な自動車メーカー、モータースポーツチーム、航空宇宙産業のほとんどが、自社製品の空力開発に風洞実験を利用しています。そして、FELTが1991年から風洞でバイクの開発を続けているのも、そのためです。各部のエアロダイナミクスを限られた時間で確認できるCFDと、バイクトータルでのエアロダイナミクスを計測できる風洞実験を組み合わせることで、真にエアロダイナミクスに優れたバイクを開発できます。そして、この「開発」を行っているという点は非常に重要です。バイクブランドの中には最終流通用のバイクを風洞実験に持ち込んで、その形のまま販売に至るブランドもあります。そうすれば、広告やマーケティングの上で「風洞実験済み」という言葉を使うことができ、実際にそのバイクが現実世界でどれだけ速いかに関係なく、エアロであると謳えるからです。それは確かに簡単な道はありますが、FELTのミッションに沿うものではありません。FELTにとって風洞実験室はバイクを「テスト」するのではなく「進化」させる場なのです。FELTではこのプロセスを「ウィンドトンネルプロトタイピング」と呼びます。

バイクをより良くするために

独立した風洞実験施設と一緒に開発実験を進めていくことは、時間的にも金銭的にも非常に労力がかかります。しかし、FELTでは、パフォーマンスを追い求めるには常に正しい方法で物事を行うことが大切であり、決して簡単な方法では成し遂げられないと信じています。私たちは、CFDソフトウェアと組み合わせて風洞室を積極的に利用し、何十もの試作フレームやコンポーネントの空力効率を検証しています。設計、テスト、これを反復し、何度も何度も、引き出せる性能の最後の一滴を絞り出すまでこれを繰り返します。
そうして初めて、これだというサンプルができあがるのです。そして、それをそのまま販売店に送り、一般に販売するのではなく、まずは主要なテストライダーたちに届けます。プロサイクリストやトライアスリート、オリンピック選手、そして業界で最も情熱的で経験豊富なFELTスタッフなどです。このテスター全員がフィードバックを提供し、そのすべてが、必要に応じてバイクをさらに洗練させ、修正するプロセスに反映されます。そして、最終的に完成した製品が、ついにライダーの元に届けられるのです。

現代のロードサイクリング・エアロダイナミクスに対する理解

FELTエンジニアは、数年にわたるリサーチとサードパーティから得た膨大なデータをもとに、実際のライディングシーンにおいて、ロードサイクリスト(トライアスリートとは異なる)は、比較的ヨー角の少ない状態でほとんどの時間を過ごすことを発見しました(「ヨー角」については次項を参照)。つまり、ほとんどの場合、サイクリストに影響を与える最大の空気抵抗は、比較的真正面からの角度でぶつかるものなのです。この新しい認識は、近年までの業界全体の常識に反しますが、最近の製品開発サイクルにおいて、Feltだけでなく、複数の先進的なフレームメーカーによって同様の結論が導き出されています。このデータをもとに、FELTエンジニアはプロジェクト毎に、新しい翼断面形状とデザインの組み合わせを何百通りもバーチャルに作り出します。同時に、有限要素解析(FEA)ソフトウェアを用いて、それぞれの形状とそれに付随するフレームチューブの接合部の構造特性を評価し、特に剛性の出力予測に注意を払います。総じてこのプロセスは、自転車のスピードとライダーのパフォーマンスをシームレスに融合させることを目的としています。そして、風を切り、ライダーのパワーを余すところなく速度へ変換させるというバイクの性能を適切に評価するものです。

ヨーアングルとは?

「ヨー角」は次のように定義されています。ライダーの進行方向と実際に影響する風向き(「相対風向ベクトル」とも呼ばれ、ライダーの速度と周囲の風向きの組み合わせ)の間の角度のことです。上述の通り、最近の研究ではロードサイクリストはほとんどの時間を低いヨー角で走行することが分かっています。しかし、「低ヨー角」という言葉はまだ厳密に定義されておらず、フレームメーカーによって指し示すヨー角の範囲が異なる場合が多々ありました。そこでFELTでは、多くのサイクリストにも明確に提示できる「低ヨー角」の定義として、ヨー角の範囲を-10〜+10°と考えています。これはFELTでの研究と、第三者の独立研究機関の調査に基づいています。この情報は、私たちが新しい翼断面形状を開発するための基礎となり、まったく新しいARロードバイクの誕生につながりました。また、将来的なプロジェクトにおいても、同様に検討されることでしょう。

#NOTJUSTFASTER.
#速いのは、当然。

「FELTBicyclesでは、エアロダイナミクス開発で陥りがちな近視眼的なアプローチで、最終的な空力統計を何よりも優先させるのではなく、仮想空間、風洞、実世界のテストを組み合わせた、より思慮深い、多層的な設計プロセスを採用しています。確かに時間はかかりますが、最終的な結果には議論の余地はありません。なぜなら、エアロダイナミクスは、サイクリングのスピードという複雑な要素のあくまで一部に過ぎないからです。例えば、世界で最もエアロダイナミクスに優れたバイクフレームでも、ライダーのパワーを路面に伝えることができなければ、現実的には遅いのです。私たちは、スピードとエアロダイナミクスにこだわると同時に、それがライダーの最高のサイクリング・エクスペリエンスに結びつくことにこだわっています。FELTは、競合や過去のどんなバイクよりも速いだけでなく、より良いバイクであることを常に目指しています。